出産一時金とは、出産にあたり公的医療保険からもらうお金のことです。その額は子どもひとりにつき42万円です。この出産一時金がもらえないときがあります。いったいどんなときに出産一時金がもらえなくなってしまうのか、確認してみましょう。
出産一時金がもらえないケースとその例外
出産一時金がもらえいないのは次の3つのいずれかひとつでも該当しているときです。
- 公的医療保険に加入していない
- 妊娠4ヶ月より前の出産である
- 生活保護を受けている
それぞれどのようなケースなのか、またその例外や代替措置などを詳しく確認してみましょう。
公的医療保険に加入していない
原理原則として出産一時金をもらうには公的医療保険に加入していることが条件になります。会社員であれば健康保険、自営業や無職の人なら国民健康保険への加入です。配偶者または親の保険に被扶養者として入っている状態でももちろん出産一時金はもらえます。
これは裏を返せば、公的医療保険へ加入していないタイミングで出産したら出産一時金はもらえないと言うことです。日本は国民皆保険制度なので、本来はどの公的医療保険にも入っていないという状態はあってはならないことなのですが、まれにそうした状態に陥ってしまうことも起こり得ます。
代表的な例は会社を退職し、その後、別の公的医療保険に加入していないケースです。会社で働いていた本人はもちろんですが、被扶養者がいる場合、彼/彼女らも医療保険へ未加入の状態になってしまうので注意が必要です。
このケースでは例外的な救済措置として「資格喪失後の継続給付」があります。退職日(健康保険からの脱退日)の前日までに1年以上継続して保険へ加入していれば、その保険から出産一時金を受け取れるというものです(出産は資格喪失日の後、6ヶ月以内であること)。ただし、この継続給付によって出産一時金を受け取れるのは出産をする本人が被保険者である場合だけです。被扶養者であった人はこれに該当しないため、出産一時金は給付されません。
妊娠4ヶ月より前の出産である
妊娠から4ヶ月(85日)前の出産には出産一時金は支給されません。というのも、法律上、出産は「妊娠4ヶ月以上の分娩」と定義されているからで、理屈上、妊娠から4ヶ月前は出産でなくなってしまうからです。
妊娠4ヶ月以上であれば、不幸にも死産や流産となってしまった場合でも出産一時金は給付されます。
生活保護を受けている
生活保護を受けているときは、公的医療保険へ加入できません。状況としては「公的医療保険に加入していないので、出産一時金が支給されない」ことになります。
しかしそれでは生活保護を受けている人の出産が困難となるため、こうした状況にある人には、生活保護の出産扶助によって支援が行われます。出産扶助が実質的に出産一時金の代替制度になるのです。ただし支援額は出産一時金よりも低くなります。
出産一時金が満額もらえないケース
出産一時金の金額は子どもひとりにつき42万円です。この額は健康保険と国民健康保険による違いはありません(健康保険の場合、組合によって独自の給付が付くこともあります)。
この42万円という金額ですが、満額もらうには「産科医療補償制度に加入する医療機関等で出産した場合」という条件をクリアする必要があります。2021年10月時点で分娩機関のある全国の病院・診療所、助産所のうち99.9%がこの制度に加入しています。そのためほとんどの人は満額もらえることになりますが、念のため出産する病院等が産科医療補償制度に加入していることを確認しておきましょう。もし加入していない場合は出産一時金は40.4万円(ひとりあたり)になります。