正社員なのに「社保」がない!? 【就職・転職者必見】社会保険の加入条件

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「正社員なのに国民健康保険に入っている」。どこか悲し気なこのコメント。世の中の常識では正社員であれば社会保険に加入できる、と思われているようです。しかし実際には社会保険に加入できない職場があります。パートやアルバイトなど短時間勤務ではない、フルタイム勤務の社員でもです。新卒の人はもちろん、社会人経験がある人も転職のときは注意してください。すべての職場が「社保完備」ではありません。

会社で働く正社員はすべて社会保険へ加入

会社に正社員として勤めているなら職場を通じて社会保険に加入できます。株式会社でも有限会社でもこれは同じです。従業員が自分ひとりしかいなくても、どんな職種であってもこの前提は崩れません。会社、正確には法人格の職場で働く正社員は、必ずその職場ですべての社会保険に加入できます。

個人事業所で働く従業員は確認が必要

世の中には会社以外にも勤め先があります。個人事務所や自営業のお店などです。弁護士事務所や税理士事務所などの士業はこれに該当します。電気工事業や運送業を個人でやっているケースもありますし、飲食店や美容院などの接客サービス業もあります。農業や畜産業なども法人化せず何名かのスタッフで運営しているところもあります。会社と区別するためにこうした勤め先は「個人事業所」と呼ぶことにします。個人事業所は会社と違って法人格をもっていません。法人でない、ということが重要です。

個人事業所で働く人の呼び方も決めておきます。社員という呼称は一般に会社で働く人を連想させるので、 このページでは「従業員」という呼ぶ方で統一します。整理すると次のようになります。

勤め先法人格の有無働く人の呼び方
会社法人格である正社員
個人事業所法人格でない従業員

会社(法人)の正社員はその会社ですべての社会保険に必ず加入できます。個人事業所(非法人)の従業員はその事業所で社会保険に加入できないことがあります。

個人事業所の従業員が入れる保険、入っていない保険

さて「社会保険」という言葉を当たり前のように使っていますが、社会保険という名前の保険はありません。健康保険、介護保険、年金保険、労災保険、雇用保険の5つの保険の総称が「社会保険」です。

労働保険と呼ばれることも。労災保険と雇用保険

労働にともなう保険であることから労働保険と呼ばれるのが、労災保険と雇用保険です。労災保険は仕事中や通勤途中のケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に備えるもの。雇用保険は失業した人への失業等給付で利用されることの多い保険です。

会社員はもちろん労働保険に加入しています。一方、個人事業所の従業員も、ほとんどのケースで労働保険には加入しています。例外は、労災保険は従業員が5名未満の農水産業と一部林業、雇用保険は従業員が5名未満の農林水産業です。これに該当する個人事業所は保険への加入が義務付けられていません。そのため、従業員は保険に加入できていない可能性があります。

狭義の社会保険は健康保険、介護保険、厚生年金保険

社会保険には狭義の社会保険という言葉があります。該当するのは健康保険、介護保険、厚生年金保険です。 健康保険は病気やけが、またはそれを理由に休業、死亡といった事態に備える保険。介護保険は介護が必要な人(要支援者・要介護者)の介護費用の一部を給付する保険制度。厚生年金保険は老後に給付される老齢年金がその代表となる保険です。

当然ながら会社員は狭義の社会保険に加入できています。個人事業所の従業員は、勤めている事業所が社会保険に入ることを義務付けられている事業所(「強制適用事業所」という)かどうかがポイントになります。 強制適用事業所とは次の業務(法定16業種という)を行い、常時5人以上の従業員のいる個人事業所です。

法定16業種とは
  1. 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
  2. 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
  3. 鉱物の採掘又は採取の事業
  4. 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
  5. 貨物又は旅客の運送の事業
  6. 貨物積卸しの事業
  7. 焼却、清掃又はとさつの事業
  8. 物の販売又は配給の事業
  9. 金融又は保険の事業
  10. 物の保管又は賃貸の事業
  11. 媒介周旋の事業
  12. 集金、案内又は広告の事業
  13. 教育、研究又は調査の事業
  14. 疾病の治療、助産その他医療の事業
  15. 通信又は報道の事業
  16. 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

強制適用事業所で働く従業員は、社会保険(狭義の社会保険も労働保険も)に加入できます。

では、この条件に外れるのはどんなときでしょうか。狭義の社会保険に入ることを義務付けられていない事業所を「任意適用事業所」と言います。任意事業所に該当するのは法定16業種ではあるけれど常時従業員が5人未満の事業所か法定16業種以外の事業所です。法定16業種以外には「一次産業(農林、水産、畜産業)」「接客娯楽業(旅館、料理店、飲食店、映画館、理容業など)」「法務業(弁護士、税理士、社会保険労務士などの事業所)」「宗教業(神社、寺院、教会など)」があり、この業種は従業員数を問わず任意適用事務所とされます。任意適用事務所で働く従業員は会社を通して社会保険に加入できない可能性があります。

任意適用事務所だと社会保険には100%入っていないのか?

任意適用事務所のすべてが社会保険に入れない職場とは限りません。厚生労働大臣の認可を受ければ任意適用事務所でも狭義の社会保険が適用になることはあります(この認可を受けるときは、被保険者となる従業員の2分の1以上の同意を得る必要があります)。任意適用事務所の条件に該当する事業所への就職や転職を予定しているなら、社会保険への加入状況を事前に事業所に確認したほうがよいでしょう。

健康保険、厚生年金に入れなかったらどうすればいい?

任意適用事業所で健康保険と厚生年金保険に入れなかったら代わりの保険に個人で入ることになります。健康保険の代わりは国民健康保険、厚生年金の代わりは国民年金です。「国民皆保険」「国民皆年金」の言葉があるように、これを避けて通ることはできません(ただし国民年金は20歳を超えてからになるので、それまでは厚生年金の代わりは実質ないことになります)。ただし一般的には国民健康保険や国民年金のほうが、待遇面ではよくないとされています(実際その通りです)。社会保険に加入していない職場で働き続けるべきかどうか。将来のことも考えて検討してください。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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