寄付金控除をしてみよう。確定申告は自動でカンタン計算

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懇意の団体に寄付はしているけど、寄付金控除をしたことがないという人。確定申告は税務署にいかなくても家のパソコンやスマホで簡単にできます。寄付金控除で税金が戻ってくれば、来年の寄付に上乗せすることもできますし、新たな寄付先を加えることもできるかもしれません。寄付金控除の利用は、寄付文化を日本に根付かせることにも繋がります。今年こそ寄付金控除をしましょう!

サラリーマンの寄付金控除の仕方

寄付金控除は確定申告で手続きをします。このことは知っている人も多いのではないでしょうか。

毎年自分で確定申告をしている個人事業主が、申告に寄付金控除を付け加えるのは造作もないことです。しかし、これまで確定申告の経験がないサラリーマンが、年度末で忙しい2月、3月にプライベートな仕事がひとつ増えるのは……。せめて年末調整で受け付けてくれれば二度手間にならないのですが、寄付金控除は確定申告でしか申請できません。

でも、安心してください。確定申告の寄付金控除の手続きはコツを掴めばそれほど手間のかかる作業ではありません。

確定申告の進め方

確定申告が初めての人は国税庁のホームページから「確定申告書等作成コーナー」を利用しましょう。パソコン、スマートフォンどちらにも対応しています。

「確定申告書等作成コーナー」を利用する一番のメリットは、寄付金控除で戻ってくる税金が最も多くなる方法を自動で選択し、その金額も算出してくれることです。用紙に手書きをするよりも、何倍、何十倍も作業は正確で楽ちんになります。

確定申告書作成コーナーの一部

「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする前にやることは、「源泉徴収票」と「寄付先が発行している領収書」を手元に用意しておくことです。

では、「確定申告書等作成コーナー」で行う手続きの流れを確認してみます。

  1. 自分の生年月日を登録する。
  2. 申告内容に関する質問に答える。
  3. 給与情報を入力する。
  4. 寄付金の情報を入力する。
  5. 戻ってくる金額を確認し、受け取り口座を入力する。
  6. 個人情報を入力する。

1. は簡単ですね。

2. は解答例をつけておきます。これまで確定申告をしたことがない会社員(副業をしていない)がモデルケースです。

  • 給与以外に申告する収入はありますか? → いいえ
  • お持ちの源泉徴収票は1枚のみですか? → はい
  • 勤務先で年末調整が済んでいますか? → はい
  • 以下のいずれかの控除を受けますか? → はい
  • 以下の控除の他に確定申告で追加する控除や年末調整の内容に変更はありますか? → いいえ
  • 税務署から予定納税額の通知を受けていますか? → いいえ

3. は入力するときに源泉徴収票が必要になります。12月の給与明細と同時に渡す会社が多いので無くさないように注意しましょう。源泉徴収票があれば、求められる内容はすべて入力できるはずです。

4. は入力するときに寄付先から受け取る領収書が必要になります。領収書は寄付した時期に応じて発行する団体もあれば、1年分を12月ないしは翌年1月にまとめる団体もあります。どのケースでも確定申告の作業前に手元に用意できていることが大事です。

5. 6. は事務的な入力を行うだけなので難しくはありません。必要な書類が揃っていれば、作業は30分から1時間程度で終わるでしょう。

なお、確定申告の方法は「e-taxで提出/マイナンバーカード方式」、「e-taxで提出/ID・パスワード方式」、「印刷して提出」の3つの方法があり、「確定申告書等作成コーナー」では最初にこれを決めなければなりません。ITに慣れているならe-taxで提出、不慣れなら印刷して提出。ここはあまり悩まずに、軽い気持ちで決めてしまいましょう。

還付金が戻ってくるのは、申告が終わってからだいたい1カ月以内です。e-taxで提出すると、少し早めに戻ってきます。お金は5. で入力した口座に入ります。

寄付金控除の計算の仕方

「確定申告書等作成コーナー」は、最適な寄付金控除の方法を自動で選び、計算してくれるので、具体的に寄付金控除がどのような方法で行われ、戻ってくる税金がどう計算されているのかは、知らなくても問題はありません。

ですから、ここから先は、確定申告が始まる前に戻ってくる税金の額を知っておきたい、「確定申告書等作成コーナー」をどうしても使えない事情がある、知識として知っておきたい。そういった人が読み進めてください。

さて、寄付金控除には税額控除と所得控除のどちらかを選ぶことができる、という特徴があります。選び方は「稼ぎが多い人は所得控除を、そうでもない人は税額控除を。」が基本です。その理由や、稼ぎが多い人の基準とは何を指すのかを、それぞれの控除方法の説明の中で取り上げていきます。繰り返しますが、「確定申告書等作成コーナー」を使えば、自動で最適な控除方法を選択し、金額も計算してくれますので、ここからの説明は読まなくても全然問題ありません。

税額控除を利用する

まずは、「稼ぎがそうでもない人向け」とした税額控除を説明します。税額控除とは、所得税の金額が決定した後に、そこから引くことができる金額のことです。所得税がいくらになるか、ややこしい計算を経て決まった後に、そこからさらに税をディスカウントするのが税額控除です。

税額控除の額は次の式で計算します。

寄付金額-2000円×40%

1万円を寄付していたら(10,000-2000)×0.4=3,200円を本来払うべき所得税から引くことができます。会社員なら税金が3,200円分戻ってくる、ということになります。もちろん、戻すのは税務署であって、寄付した先からではありませんので、安心してください。むしろこのお金をプラスして、次回は13,200円を寄付するという考え方もできるのです。

注意点は、税額控除できる金額はその年の所得税の25%が限度になっているということです。3,200円の控除を全額受けるには、その年の所得税が3,200÷0.25=12,800円以上であることが条件です。

所得控除を利用する

所得控除は「稼ぎが多い人」が寄付金控除を利用したときにメリットが大きくなる方法です。ここでいうメリットとはもちろん、税金がより多く戻ってくるということです。

税額控除は所得税の金額が決定した後にそこから引く金額のことでした。対して所得控除は、所得税の計算をする過程で組み込まれるものです。

話しをシンプルかつ具体的にしましょう。

ある人が1年間会社勤めをしお金を稼ぎました(①年収)

所得税はこの年収すべてにかかるわけではありません。まず、年収を得るためにかかった経費には税金はかかりません(②年収-経費)

家族をたくさん養っている場合などは、稼ぎに対して一定額は税金をかけない、という決まりもあります。これを所得控除と言います。所得控除は特定の目的に対して支払われたお金がある場合は、その一部を控除できるというものもあります。社会保険料や生命保険料、医療費などです。寄付金もこのなかのひとつです(③年収-経費-所得控除)

年収から税金がかからない経費、所得控除を引いたものに税率をかけて、所得税額を計算します(④(年収-経費-所得控除)×税率)

では、ここで1万円の寄付に対する控除でどれくらい節税となるのかをシミュレーションしてみましょう。まず寄付金控除の額です。これは、寄付金額-2000円で計算します。寄付金が1万円なら寄付金控除額は8,000円です。

この8,000円に税率を掛けた分が、所得税から節税できる金額になります。所得税率が10%なら800円の節税ということです。

日本の所得税は累進課税制度であるため、所得が多い人ほど税率が高くなります。もっとも低い税率は5%、高い税率は45%です。同じ1万円の所得控除でも税率が5%のときは400円、45%のときは3,600円と節税額が大きく異なるのです。所得税率が45%になるのは、③年収-経費-所得控除の結果が4,000万円を超える人です。これが寄付金控除における「稼ぎが多い人」で、税額控除よりも寄付金控除を利用したほうがメリットが大きくなる人の基準です。

寄付金控除と住民税

ここまで寄付金控除で戻ってくる税金の話をしてきましたが、これは所得税の話です。確定申告で寄付金控除を行えば、実は住民税の節税も同時に行っていることになります。

寄付金控除における所得税と住民税の決定的な違いは、所得税は源泉徴収によって支払い済みの税金からの還付を受けるのに対し、住民税はこれから支払う税額が少なくなる、という点です。また住民税では、所得税のときのように控除方法を選ぶということはありません。

では、具体的に住民税がどれだけ安くなるかです。計算式がありますので、それを確認しましょう。

寄付金額-2000円×10%

この計算結果が寄付による住民税の節税効果です。1万円の寄付なら(10,000-2000)×0.1=800円が、本来払うべき住民税よりも少なくなる、ということです。

寄付金控除による節税効果のまとめ

控除の仕方が選択制であったり、所得税と住民税の両方に影響があったり、何より確定申告という未知なる手続きをしなければならないという点で、ついつい及び腰になってしまう寄付金控除。

しかし、大事なことは次の3点に集約できます。

  • 寄付金控除はPCまたはスマホで申告書を作成することができる。
  • 「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、寄付金控除の仕方、控除額は自動で計算してくれる。
  • 寄付金控除による所得税と住民税を合わせた節税効果は(寄付金額-2000円×50%(所得税40%、住民税10%))である。

意外とすっきりしていると思いませんか。最初の一歩を踏み出すだけで、実はゴールはそれほど遠くはないのです。ぜひ、寄付金控除をしてみましょう!

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