医療費控除の還付金が少なすぎてショック!どうしてそうなった?

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確定申告で医療費控除をして還付金が戻るのを楽しみにしていたのに思っていたより少なくて残念、ということがあります。どうして想像より還付金は少ない金額になってしまったのでしょうか。すでに医療費控除をした人も、次の確定申告でしようと考えている人も、医療費控除と還付金の関係を正しく理解しましょう。

還付金が少ないのは勘違いが原因?

還付金が少ないと思うのは、勘違いから生じることが多いです。よくあるのは医療費控除額がそのまま還付金になるという勘違いです。

この勘違いが生まれる理由は、控除のなかには控除額がそのまま還付金の対象となる控除があるからです。このような控除を「税額控除」と言います。具体的には住宅ローン控除や寄付金控除などが税額控除に当たります。残念ながら医療費控除は税額控除ではありません。「医療費控除の還付金が少ない」と思うのは、医療費控除を税額控除のひとつと勘違いしているからかもしれません。

「医療費控除額≠還付金額」

この大前提を最初に頭に入れておきましょう。

では、医療費控除額に対して還付金はいくらになるのでしょうか。還付金は次の計算式のいずれかを用いて計算します。

医療費控除額×5%
医療費控除額×10%
医療費控除額×20%
医療費控除額×23%
医療費控除額×33%
医療費控除額×40%
医療費控除額×45%

これでどれだけ還付金が多くても、医療費控除額の半分にも満たない(最大でも45%)ことが分かります。一方、もっとも多い45%ともっとも少ない5%では9倍もの違いがあるので、自分がどの計算式を使えるかで、還付額にかなりの差が出ることが想像できます。

自分がどの計算式を使うかは医療費控除分を引いた後のその年の課税所得金額によって決まります。課税所得金額が低いほど使える数値(割合)は小さく、反対に課税所得金額が高くなると数値のほうも大きくなります。具体的な範囲は次の表で確認してください。

医療費控除後の課税所得金額割合
1,000円から1,949,000円5%
1,950,000円から3,299,000円まで10%
3,300,000円から6,949,000円まで20%
6,950,000円から8,999,000円まで23%
9,000,000円から17,999,000円まで33%
18,000,000円から39,999,000円まで40%
40,000,000円以上45%

たとえば医療費控除後の課税所得金額が150万円の人の医療費控除額が10万円のとき、その還付金は【10万円×5%=5,000円】になります。

医療費控除の還付金をより多く受け取るためには

医療費控除で還付金がいくらになるか、計算の仕方と具体的な計算式が分かったと思います。還付金をより多く受け取るためには、医療費控除額を大きくすることがポイントです。

医療費控除できるものを漏らさず申請

医療費控除の対象となるものには何があるのでしょうか。まず思い浮かぶのは、病院での治療費と薬局での薬代です。このように治療のためにかかった直接的な費用はすべて医療費控除の対象になります。反対に予防を目的としたものや健康増進のためにかかる費用(サプリメントや栄養ドリンクの購入費用など)は対象外です。

と、大枠ではこのように説明するのですが、実際には個々の事例にあわせて、医療費控除になるかどうかは決まります。たとえば入院費用については医療費控除の対象になりますが、個室を利用した場合に生じる差額のベッド代や、テレビ・冷蔵庫などのレンタル料、入院に必要なパジャマや洗面用具の購入などは対象外です。また病院に通うための通院費は、公共交通機関を利用したときの費用は医療費控除の対象ですが、タクシー代、自家用車を利用した際のガソリン代や駐車場代は対象外です。ただし、これには例外もあって緊急時にタクシーを利用した場合や、交通公共機関が利用できずやむを得ずタクシーを利用した場合などは医療費控除とすることができます。

このように医療費控除は対象となるもの、ならないものの選別は簡単ではありません。タクシーの例外のようなケースもありますので、医療費控除にならないだろうと決めつけずに細かく確認する必要があります。

同様の例で、健康診断や歯の定期健診費用はそれだけでは医療費控除の対象になりませんが、診断によって重大な疾病が発見されその疾病の治療を行う場合は、その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるため医療費控除の対象になります。歯の定期健診も同様でそこで虫歯が発見され治療をするならば、定期健診費用も医療費控除の対象になります。

医療費はこまめに記録。アプリを利用する方法も

医療費控除の申請では、どの費用が控除の対象になるかどうかを確認することも大事ですが、それと同じか、人によってはそれ以上に重要なことが、治療費や薬代などに払った費用の抜け、漏れをなくすことです。通院に電車やバスなどの公共交通機関を利用している人ならその費用もこまめに残しておく必要があります。

こうした細かい作業が苦手な人はスマホアプリを利用してもいいでしょう。医療費や交通費を記録として残せるだけでなく、その情報をそのまま医療費明細書の作成に使えるアプリもあります。ただし、アプリに記録していても医療費の領収書は5年間の保管義務があります。捨てないように気を付けてください。

家族の誰が控除するかで還付金に差がつく

医療費控除は家族の医療費をまとめることができます。共働きであれば夫と妻のどちらが申請するかで還付金が変わることがあります。

たとえば夫の課税所得金額が3,300,000円から6,949,000円までの範囲であれば、控除額に対し20%が還付金の額になります。このケースで妻の課税所得金額が1,950,000円から3,299,000円の範囲なら還付金は控除額の10%ですから、夫が医療費控除をしたほうが、還付金はより多く(妻のときの倍)戻ってくる計算になります。

このことから、家族の医療費をまとめて控除する場合は、所得の多い人が申告するというのが鉄則です。

ただし、この鉄則には例外があります。夫婦いずれかのその年の総所得金額等が200万円未満の場合です。

この例外を説明するために、まず通常の医療費控除額の計算方法を確認しましょう。

医療費控除額=支払った医療費等の合計額-保険金などで補填された金額-10万円

ところで夫婦のどちらかが「その年の総所得金額等が200万円未満」という例外においては、上の計算式の10万円部分を「総所得金額等の5%の金額」にすることができます。

たとえば妻の総所得金額が100万円で、その年に支払った医療費等の合計額が12万円だったとします。この場合、医療費控除額は「12万円-100万円×5%」で70,000円です。還付金を×5%で計算すると3,500円になります(保険金などで補填された金額はゼロとします。以下も同じ)。

もしこのケースで夫(総所得金額は1,950,000円から3,299,000円までの範囲)が医療費控除をするとしたら医療費控除額は「12万円-10万円」で20,000円です。還付金は医療費控除額×10%なので2,000円です。わずかですが妻が医療費控除をした方が還付金の額が増えました。

医療費控除で住民税が安くなる

医療費控除による節税メリットは所得税の還付金だけではありません。医療費控除は住民税の節約にもなるのです。

住民税は所得額が決まってから税額を計算します。住民税の算は複数の方式を掛け合わせて行われますが、そのひとつ所得割の計算式は「課税所得金額×10%」です。この10%は所得税の時と違って不変の数値です。つまり医療費控除額×10%がそのまま住民税の節税額になります。

医療費控除の還付金はいつ戻ってくる?

還付金は所得控除、税額控除別に戻ってくるわけではありません。確定申告によってその年の収入、所得控除、税額控除を整理し源泉徴収分のほうが本来の所得税が多かった場合に還付金は発生します。

還付金が戻ってくるタイミングは確定申告から1ヵ月から1ヵ月半程度が目安とされていますが、オンラインで確定申告をした場合は、それより早く、申告からおよそ2週間で確定申告時に指定した振込口座へお金が振り込まれることも珍しくありません。事前に振込に関する案内(振込通知書)が郵送で届きますので、そちらを確認しつつお金が振り込まれるのを待ちましょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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