仕事中の骨折。労災で給付される金額はいくら?[労災シミュレーション 軽~中度]

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 仕事中にケガをしたら迷わず「労災」。労災給付の手厚さを知れば、これ一択で間違いない。それなのに、病院では健康保険を使ってしまう人が後を絶たない。保険料を自分が払っていないから労災保険のことを忘れているのだろうか。仕事中のもしものケガに備えて、元気なうちに労災のことを考えておこう。

労災で給付されるもの

 たとえば仕事中に足を骨折をしてしまったとしよう。もちろんを「仕事をしていて」だ。自分に過失があるかどうかは問わないよ。骨折にもいろいろあるけど、今回は数週間の入院と自宅待機が必要なレベルのケガだったとしよう。この状況で考えられる労災の給付には次のようなものがある。

  • 診察代
  • 薬代
  • 入院費
  • 会社を休んでいる期間の生活費等

 具体的にどんな給付なのか。専門的な言葉も交えて確認しておこう。

病院でのお金がかからない。療養補償給付。

 仕事中に現場で骨折してしまった!急いでタクシーで病院へ向かう。この時点で労災の給付は始まっている。そう、タクシー代だ。これは労災の給付対象だから領収書をしっかりもらっておこう。

 病院で診察を受ける。軽度な骨折であれば診察と薬の処方だけで家に帰れるかもしれない。診察代と薬代。労災の給付対象だ。

 足の複雑骨折などケガの程度が重くなると、入院もやむを得ない。入院代。もちろん労災の給付対象だ。

 病院での診察代や薬代、入院費用などを給付する制度を「療養補償給付(療養給付)」というよ。手続き等の簡便さを考えると、労災指定病院で現物(治療や薬、入院)を給付してもらうほうが楽だ。労災指定病院にかかれなかったときはキミが払ったお金を後から全額給付してもらうことになる。

 同じ病院で治療を受ける場合でも、健康保険だと3割は自己負担になるし、病院へ移送されたときのタクシー代が健康保険で給付になるなんて話はない。そう、絶対に労災の給付をうけるべきなんだ。

会社を休んで給料が減ったときの、休業補償給付。

 骨折の程度が思ったよりも重症で1週間の入院とその後は自宅での安静が言い渡されてしまった。話をわかりやすくするため、ここでは都合1ヵ月、会社を休んだものとしよう。

 労災で会社を休みその分の給料がなくなってしまったら、ふつうは困るよね。そんなときに労災保険から給付されるお金がある。

 細かい内訳は省略するが、会社を休んだ4日目から休業補償給付等によって給付基礎日額の80%相当額が支給されることになる。給付基礎日額とは、直近3ヵ月間の賃金の総額(ボーナス等は含まない)を、その期間の暦日数で割ることで算出される1日あたりの平均賃金額だ。ここは具体例で確認しておこう。労災にあたる事故が10月15日にあった場合のシミュレーションだ。

暦日数賃金
7月31日間200,000円
8月31日間200,000円
9月30日間200,000円
合計92日間600,000円

 給付基礎日額は600,000円÷92日間=6,522円(1円未満切り上げ)になる。支給されるのは給付基礎日額の80%なので、6,522円×0.8=5,217円(1円未満切り捨て)だ。

 今回のケースでは1ヵ月(30日間)会社を休んた想定なので、27日×5,217円=140,859円が給付される。30日より3日少ないのは、労災事故から最初の3日間は待期期間と呼ばれ、休業補償給付がないためだ。労災保険からの給付はないが、労働基準法により事業主が平均賃金の60%を補償しなければならないことが決まっているので、6,522円×0.6×3=11,739円が労災保険とは別に支給される。

障害が残ってしまったら、障害補償給付

 たかが骨折、されど骨折。骨折でも後遺症が残ることは十分あり得る。たとえば骨折部位に痛みや痺れなどが残れば、神経障害の可能性がある。このように労災事故で一定の障害が残った場合に備えた給付が障害補償給付だ。

 障害補償給付は障害の程度がより重いものから順に1~7級、8~14級と等級が定められている。なぜ等級を1~7と8~14で分けたかというと、障害の程度が重い1~7級は年金形式での給付、程度が軽い8~14級は一時金での給付になるからだ。今回は8~14級の障害等級と認定された場合の障害補償給付を説明する。

 障害補償給付で支給される一時金は3種類ある。給付基礎日額がベースにある「障害補償給付」、ボーナスを考慮した「障害特別一時金」、一律の額で決まっている「障害特別一時金」だ。 それぞれが等級ごとに決まっている。表で確認してみよう。

障害等級障害補償給付
(給付基礎日額の)
障害特別一時金
(算定基礎日額の)
障害特別一時金
8級503日分503日分65万円
9級391日分391日分50万円
10級302日分302日分39万円
11級223日分223日分29万円
12級156日分156日分20万円
13級101日分101日分14万円
14級56日分56日分8万円
執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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