「ウーバーイーツ配達員、労組結成」で知る労災保険のありがたみ

2019-10-30

 海外(特にアメリカ)によく行く人は「Uber(ウーバー)」が配車アプリの代名詞になっていることは知ってるよね。利用したことがある人もいるんじゃないかな。日本は規制の問題があるので配車アプリとしては目立っていない。認知度が高いのは「ウーバーイーツ」だ。今回この「ウーバーイーツ」の配達員が労働組合を結成したことに注目が集まっている。

配達員はなぜ労組を結成する必要があったのか。

 ウーバーイーツについて簡単に説明しておこう。 ウーバーイーツ (サービス名と社名は異なるが以下ウーバーイーツで統一する) とは、利用者がスマホで注文した食事をデリバリーしてくれるサービスだ。 食事の提供は提携するファストフードやレストランが行い、ウーバーイーツの配達パートナーがそれを利用者のもとへ届ける。配達パートナーは配達回数や距離などをもとにウーバーイーツから報酬を受け取る仕組みだ。

 配達パートナーという呼び方は今回のニュースを考えるひとつのポイントでもある。もし配達員がウーバーイーツに雇用されている従業員であればその呼び名は「配達スタッフ」がふさわしい。

 だが、実際にはウーバーイーツと配達員との関係は「雇用されていない独立した第三者の契約」だ。ある意味でウーバーイーツと配達員は対等な関係なので「配達パートナー」という呼び方を採用したのだろう。配達員が、配達を完成させることを約束し、ウーバーイーツがその配達の結果に対して報酬を支払うことを約束する。いわゆる請負契約だ。

 従業員か請負契約かの違いはいろいろあるけれど、配達パートナーはウーバーイーツの従業員ではないので労災保険に加入できないことは大きな意味を持っている。とくに配達員のように事故の可能性が高い仕事では、労災保険がないリスクはかなり危機的な状況ともいえる。

 彼らのような働き方でも労災保険を適用できる法整備を要望するために、ウーバーイーツ配達員の有志は労組を結成する必要があったんだ。

 見方を変えれば、(ウーバーイーツに限らず)会社勤めをしている従業員は手厚い労災保険によって守られているとも言える。当たり前にあるものほどその価値がわかりづらい。労災保険とはまさにそういうものなのかもしれない。 労災保険がどれだけ手厚いかは労災保険の給付内容を確認すればよくわかる。

労災保険は仕事中、通勤途中の従業員をカッチリ守る。

 労災保険の給付には以下のものがある。どれも業務災害または通勤災害による疾病・死亡が給付の対象だ。 業務災害のときの給付を「補償給付」、通勤災害の給付を「給付」と呼び名を分けているがここではすべて「補償給付」で統一する。

 労災保険の保険料は会社が全額負担している。従業員は負担ゼロでいざというときはこれらの給付を受けることができるんだ。

療養補償給付

 ケガや病気が治癒するまでの間、療養の現物給付(労災指定医療機関の場合)またはその費用が全額給付される。ウーバーイーツの配達員であれば配達中の交通事故によるケガなどが心配だろう。ウーバーイーツも配達パートナーの事故に対する補償を2019年10月から創設している。ケガの治療費は上限25万円、入院費は1日7500円(30日まで)を上限に支払われる。

障害補償給付

 ケガや病気が治癒した後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったときは年金形式の障害補償年金が給付される。ケガや病気が治癒した後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったときは一時金として障害補償一時金が給付される。ウーバーイーツの配達員も交通事故が原因で障害が残る可能性はあるが、そのときの補償は用意されていない。

休業補償給付

 ケガや病気の療養のため働くことができず、賃金を受けられないときに、休業4日目から給付される。毎日8時間ウーバーイーツで配達を行っていたとしても、ウーバーイーツの配達員にこのような給付がされることはない。

遺族補償給付

 死亡したときには、遺族の人数等に応じた遺族補償年金と遺族特別年金、遺族特別支給金が給付される。ウーバーイーツの配達員の遺族にこのような給付がされることはない。ウーバーイーツでは死亡時に上限1千万円の見舞金が支払われる。

葬祭料

 死亡した人の葬祭を行うときに、葬祭を行う者に対して給付される。ウーバーイーツの配達員の遺族等にこのような給付がされることはない。

傷病補償年金

 ケガや病気が療養開始後1年6ヶ月経過しても治っていない場合や、障害が障害等級に該当するときに給付される。ウーバーイーツの配達員にこのような給付がされることはない。

介護補償給付

 障害補償年金または傷病補償年金受給者のうち、一定の要件を満たす人が現に介護を受けているときに給付される。ウーバーイーツの配達員にこのような給付がされることはない。

多様な働き方を支えるセーフティネットづくり。

 後半は呪文のごとく「ウーバーイーツの配達員にこのような給付がされることはない」を繰り返してしまった。

 新しいビジネス、配達パートナーのような新しい働き方は本来歓迎されるべきことだろう。一方で必要な体制や法制度が整っていないと、その働き方が持続できなくなってしまう恐れもある。今回の件でいえば、ウーバーイーツは「配達パートナー」の存在なくしてはビジネスが成り立たない。にもかかわらず、彼らを支える仕組みやセーフティネットが不十分だった、ということか。

 なお、配車アプリサービスのUberのドライバーをめぐってはカリフォルニア州でUberのドライバーは独立した請負業者ではなく、従業員として位置付ける法案が2019年の9月上旬に可決されている。