所得控除が分かると節税になる! 仕組みをわかりやすく解説

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所得税の税額を決めるにあたり、所得控除の役割は非常に重要です。所得控除を上手に活用できれば、それだけ節税にもつながります。所得控除とは何か?節税の視点を使って、わかりやすく解説します。

このページで想定する読者は会社員(契約社員やアルバイトも含む)や公務員として常時雇用され報酬を得ている人です。また勤め先のことを総称として「会社」と表現しています。

税金を少なくする所得控除の仕組み

所得控除は単独で覚えようとするのではなく、所得税全体のフローのなかで見ていく方がわかりやすいです。特に節税を意識した視点を持つことで理解も早くなりますし、税金が減るという具体的な恩恵にあずかれる可能性もあります。

では、会社員などが仕事でお金を稼ぎ、それが所得税として支払われるまでがどのような流れで決まるのか、図で確認してみましょう。

所得控除を含む節税のフロー

収入とは税金や社会保険などが一切引かれていない状態。稼いだ総額に該当するものです。まず、この収入から①経費を差し引くことで所得を算出します。サラリーマンなどの給与所得者は、①の経費による節税はかなり困難です。これは、あらかじめ給与所得控除という枠が決められていて、ほとんどはその枠内で計上されるからです。

そこで重要になるのが②所得控除です。所得控除は、所得のなかから課税対象から外すべき理由とその金額を決定する、という役割があります。より端的な答え方をするなら「所得税の割引制度」と言えるかもしれません。家庭や個人の事情、お金を使う目的次第で所得税そのものを減らす効果があります。

たとえば配偶者や扶養家族がいるなら、必要になるお金はそうでない人よりも増えます。また、本人や家族に障害があったり、ひとり親で子どもを育てているケースでは、お金の必要性はより高くなると言えるでしょう。例外もありますがこうした各人の事情を考慮し、それぞれが最低限の生活を送るために必要なお金には税金をかけない、という考え方で所得控除は成り立っています。

ただし、こうした事情というものは、それぞれが申請しない限り会社も税務署も把握できず適切な所得控除ができません。申請がなければ当然、納税額を減らすことができません。

所得控除は、利用できる制度を漏れなく活用し申請することが必要になります。その申請の場所としてあるのが年末調整であり、確定申告です。

所得控除の種類はぜんぶで14。必要な控除を見極めて

所得控除はぜんぶで14種類あります。

下の表を見てください。ちょっと目を通すだけでも自分に関係が深そうなものとそうでないものがイメージできるのではないでしょうか。まずは関係ありそうなものをピックアップして、その所得控除をきちんと理解するところから始めてください。

表中には各所得控除の申請のタイミングとして、年末調整か確定申告かを記載しています。年末調整であれば会社を通じて、確定申告であれば自分でそれぞれ控除を申請することになります。

所得控除名称適用の可能性がある主なケース申請のタイミング
基礎控除個人の合計所得金額が2500万円以下の場合。年末調整
配偶者控除合計所得金額が38万円以下の配偶者がいる場合。年末調整
配偶者特別控除合計所得金額が38万円超123万円以下の配偶者がいる場合。年末調整
扶養控除合計所得金額が38万円以下の扶養親族がいる場合。年末調整
障害者控除本人または配偶者、親族が障害者である場合。年末調整
寡婦控除・寡夫控除ひとり親で子どもを育てている場合。年末調整
勤労学生控除学生の場合。年末調整
社会保険料控除社会保険料を支払った場合。ほぼ適用される。年末調整
生命保険料控除生命保険料に加入している場合。年末調整
地震保険料控除地震保険料に加入している場合。年末調整
小規模企業共済等掛金控除確定拠出年金に加入している場合。年末調整
医療費控除医療費をかなりの額支払っている場合。確定申告
雑損控除災害や盗難などにあった場合。確定申告
寄付金控除寄付をした場合。確定申告

扶養控除した、しないで税金はどれだけ変わる?

扶養控除を例に、所得控除の効果を考えてみましょう。扶養控除は年末調整で行います。対象年齢はその年の12月31日時点で16歳以上の子どもがいるかどうかです。

所得控除は申請によるものだと説明しましたが、扶養控除であれば年末調整でその申請を行います。第一子が16歳になった年の年末調整が、はじめての扶養控除の申請になるという人も多いはずです。まずは、この申請を忘れずに行わなければなりません。

申請は難しいことではありません。年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に控除対象扶養親族(16歳以上)という項目があるので、そこに対象者の名前や生年月日を記入するだけです。16歳の扶養家族の場合、控除額48万円を所得から差し引くことができます。

この控除をするしないで、最終的な税額にはどの程度の影響があるのか。考えてみましょう。所得税率は課税所得額によって決まっています。

課税所得金額税額
195万円以下5%
195万円超330万円以下10%-97,500円
330万円超695万円以下20%-427,500円
695万円超900万円以下23%-636,000円
900万円超1,800万円以下33%-1,536,00円
1,800万円超4,000万円以下40%-2,796,00円
4,000万円超45%-4,796,000円

課税所得が195万円以下なら扶養控除額48万円の5%にあたる24,000円が、課税所得195万円超330万円以下なら扶養控除額48万円の10%にあたる48,000円が、それぞれ扶養控除による税額の違いとなって現れます。

年末調整の用紙に記入する時間は1分もかかりません。1分でこれだけ稼げる仕事はそうはないでしょう。稼ぐことと同じレベルで無駄な税金を払わないことにに意識を向ければ、こんなに簡単にお金を手に入れることもできるのです。

所得控除の位置づけ

14種類あるすべての所得控除を同時に覚える必要性はあまりありません。どれかひとつの所得控除が分かれば他の所得控除を利用するシーンでも、その応用として対処できることがほとんどです。

特にはじめて所得控除に触れるときは、控除名やその条件よりも、所得控除が所得税を計算するときに果たす役割、位置づけを正しく理解することを意識しましょう。そうすることで所得控除の役割がわかりやすく理解できます。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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