健康保険の「被扶養者」。扶養に入るとき・出るときの手続き

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 「被扶養者」。厄介そうな言葉だ。扶養されている人のことだね。親子関係でいうと子どもは親に扶養されるので被扶養者になる。健康保険の被扶養者は被保険者の収入によって生活している家族のこと(子どもだけとは限らない)。今回は健康保険で扶養に入ったり、扶養から出たりするときの手続きについて、よくあるシチュエーションをもとにして説明するよ。

配偶者の扶養に入るとき。

 成人したのち配偶者の扶養に入るケースを考えてみよう。便宜上、被保険者を夫、被扶養者となる人を妻とするよ。

  1. 【夫】組合に提出する書類を確認する。
  2. 【妻】提出を求められた書類を取得または準備する。
  3. 【夫】必要書類を組合に提出する。

 プロセスそのものは扶養から出るときと大差ないが、プロセス(1)で提出する書類の数が増え、その中身も煩雑になる。組合にとって被扶養者が増えることは組合が負担するお金が増えることとイコールなので手続きをきちんとするのは当たり前と言えば確かにそうなのだが…。

 提出書類は「健康保険被扶養者異動届」「被扶養者状況届」のふたつが基本だ。どちらも組合ごとに書式が決まっている。

 ほかに被保険者と被扶養者となる人の続柄を確認する書類、被扶養者となる人の就業状況や収入を確認する書類が必要になる。続柄確認は戸籍謄本または戸籍抄本、もしくは住民票で行う。就業状況や収入を確認する書類としては次のどれかで行うのが一般的だ。

・退職証明書
・健康保険資格喪失証明書
・雇用保険被保険者離職票1・2
・雇用保険受給資格証
・直近の確定申告書
・課税(非課税)証明書

 収入確認にすべての書類が必要ということではない。被扶養者となる人の状況で確認に要する書類が変わるので、プロセス(1)でどの書類を用意しなければならないのかをはっきりさせておこう。原本かコピーかもあわせて確認だ。

 プロセス(2)は、書類によってもらう先やもらうタイミングがバラバラなのが大変なところだ。だからといって成行でこの時間を過ごしてはいけない。被扶養者の認定日に影響するからだ。

 被扶養者の認定日は見落とされがちだけど重要だ。認定日の決め方はいくつかある。移動理由が生じた日、書類がすべて提出された日、書類の提出かつ組合が認定を行った日などだ。組合によって取り決めは様々。認定まで日が空いてしまうと、その間の医療費が全額自己負担になってしまう可能性もある。プロセス(1)の時点で認定日がどう決まるかを組合に確認して、それにあわせてプロセス(2)(3)を進めていこう。

親の扶養から出るとき。

 ふつう、子どもは親の健康保険の被扶養者となっている。そして、子どもが親の健康保険の扶養から出るのは就職がきっかけになることが多い。「就職」シチュエーションで手続きを確認してみよう。

  1. 【親】組合に提出する書類を確認する。
  2. 【子】これまで使っていた健康保険証を親に返却する。
  3. 【親】必要書類を組合に提出する。

 プロセス(1)。扶養から出ることを「被扶養者の削除」という。多くの組合がこの時、「健康保険被扶養者異動届」を使用して手続きを行う。フォーマットは社内の担当部門か組合のホームページで手に入れることができるはずだ。異動届のほかにも提出するものがあるかどうか確認しておこう。子どもの健康保険証の返却はマストだ。

 プロセス(2)(3)は記載のとおりだ。組合によっては子どもが就職先で交付された新しい健康保険証のコピーの提出を求めるところもある。速やかに対応するようにしよう。

配偶者の扶養から出るとき。

 基本的には「親の扶養から出るとき」と同じだ。組合は出ていく人にはやさしい。

  1. 【夫】組合に提出する書類を確認する。
  2. 【妻】これまで使っていた健康保険証を夫に返却する。
  3. 【夫】必要書類を組合に提出する。
執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。