パート、バイトも義務化!? 社会保険の加入条件と適用拡大【2020年版】

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社会保険の加入をパートやアルバイトにも広げていこうという動きがあります。制度の見直しはいつなのか、対象になる人とならない人の違いなどを確認しましょう。

このページでパート・アルバイトの勤務先とするのは法人格をもつ会社で、個人事業所は含まないものとしています。

パートやバイトが加入する社会保険とは?

ひとくちに社会保険といっても色々な種類があります。もっとも広義な意味での社会保険には「医療保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険が含まれます。このうち雇用保険と労災保険については、労働時間が短いパートやアルバイトでも加入していることがほとんどです。

今回の記事で取り上げる社会保険とは、パートが会社を通じて加入する医療保険、年金保険、介護保険です。会社を通して入る医療保険は健康保険、年金保険は厚生年金なので、この先はその呼称を使用します。また、介護保険は40歳以上になると加入が義務付けられる(保険料の支払いが開始される)保険です。ご自身の年齢によって保険の有無が変わりますので注意してください。

パートやアルバイトのなかには、勤務先で社会保険に入りたい人と、社会保険に入ったら困る人がいます。社会保険の加入条件を確認するときは、どの立場で見るかも重要です。いずれにせよ勤務先で社会保険に加入するかどうかは、個人の事情や意思とは関係ありません。加入条件を満たしたら強制的に加入させられることになります。勤務先の社会保険に入りたくない人にとってはこの点は重要ですので注意してください。

社会保険の加入条件は毎年違う?2020年の加入条件

では、パートやバイトの社会保険(健康保険、厚生年金、介護保険)の加入条件が2020年時点でどのようになっているか、確認していきましょう。

絶対に社会保険へ加入するパート、バイトの働き方

下記はパートやアルバイトであっても勤務先の社会保険に必ず加入しなければならない条件です。

  • 勤務時間および日数が、正社員の4分の3以上であること

正確には、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の場合です。トータルで稼ぐ金額や、学生かどうかといった点は関係ありません。週5もしくは週4でパートやアルバイトをしている人であれば大半はこの中に入ります。おそらくこうしたパート、アルバイトはすでに社会保険に加入しているので、そもそもこの記事を読んでいないかもしれません。

勤め先の規模で社会保険へ加入できるかがパート、バイトの働き方

正社員の4分の3以上ほどは働いていない場合は、また別の条件があります。先に説明しておくと、この条件が勤め先の規模によって異なるというのが、今の制度の不思議なところです。会社規模の大きいところでは社会保険に加入しやすく、規模が小さいところでは同じ条件で働いていても加入できない、ということが起こりえます。

従業員数が501人以上の規模の大きい会社で働く場合

下記(1)から(4)のすべてに該当する場合は、パート、アルバイトも社会保険に加入することになります。

  • (1) 週所定労働時間が20時間以上
  • (2) 月額賃金8.8万円以上
  • (3) 1年以上の使用見込みがある
  • (4) 学生等でない

正社員の4分の3以上の勤務という条件からはかなりハードルが下がりました。社会保険に加入したいのであれば労働時間、月額賃金がこのラインを超えるようにシフトを組んでもらう必要があります。入りたくない人はその反対です。

従業員数が501人未満の会社で働く場合

従業員数が501人未満の会社で働く場合の社会保険の加入条件は、501人以上の会社で働く場合の条件のなかの、(1)だけが違います。週所定労働時間20時間以上が、週所定労働時間30時間以上に変わるのです。ほかは同じです。

社会保険の適用拡大はパート、バイトがターゲット?

同じ労働条件なのに、勤め先の規模によって社会保険への加入の有無が決まるいうのは、本当に不思議なことです。この記事の冒頭で「社会保険の加入をパートやアルバイトにも広げていこうという動きがあります」と書きましたが、これはこのような不思議を無くすための動きでもあります。

社会保険の適用を拡大したいのは誰?何のために?

そもそも社会保険の適用を拡大したいのは誰なんでしょうか。

これは政府・厚生労働省です。理由は「パートやアルバイトが将来の年金を多く受け取れるようにする」「働き方の違いで年金受給に差が出ることの不平等の解消」などがあります。

社会保険のなかでも年金保険は国民健康保険と社会保険では受給額に大きな差が生じます。パートやアルバイトに代表される非正規社員は2018年時点で全労働者の4割近くを占めています。たとえばある人が、厚生年金に加入しない非正規社員の道を一生かけて貫くとしましょう。今の制度だと老後にもらえるのは国民年金だけです。国民年金は満額もらえる人でも月の支給額は6万5千円を少し下回る水準です。もしほかに資産がなかったらこの支給額だけで生活するのは難しいと言えるでしょう。こういう可能性のある働き方をしている人が全体の4割というのは見逃せない数値です。パートやアルバイトでも厚生年金に加入できれば、老後は国民年金(基礎年金)にプラスして厚生年金分が受け取れます。

実際、そうした面から社会保険に入りたいパートやアルバイトは多いのですが、これまで見てきたように条件を満たさなかったり、あるいは同じ働き方をしていても勤め先の規模で加入できないケースがあるのが今の制度です。

現在は、これらの問題解消に向けて段階的に適用を拡大していくことが決まっています。

適用拡大で社会保険に入るのはどんなパート、バイト?

適用拡大は、週所定労働時間が20時間以上あり、それ以外の条件(月額賃金8.8万円以上、1年以上の使用見込みがある、学生等でない)を満たしているにもかかわらず、勤め先の従業員数が501人未満であるために社会保険に入れないパート、アルバイトが対象です。

最初に行われたのは、従業員数が501人未満の会社でも労使合意があれば所定労働時間が20時間以上(30時間に満たなくても)で適用範囲になるという法律の制定です。2017年4月から実施されています。

次に行われること、実施は2022年10月になるのですが、これが特に重要です。

適用条件のひとつ、週所定労働時間が20時間以上か30時間以上かを決める勤め先の従業員数は、現在501人以上がボーダーラインになっています。これを101人以上へ一気に引き下げます。つまり週25時間働いているのに、企業規模が小さくて社会保険に入れなかったパート、アルバイトにも社会保険加入への道が開けるようになるのです。厚生労働省の見立てではこれで約45万人が社会保険に加入できることになります。

この従業員数の引き下げは2024年10月にも行われます。この時は51人以上へ引き下げられる予定です。

時期対象企業の従業員数の基準
現在~2022年9月501人以上
2022年10月~2024年9月101人以上
2024年10月~51人以上

従業員数の引き下げは適用拡大の第一手にすぎません。今後は週所定労働時間が20時間未満の働き手に対してもその範囲を拡げたい考えです。厚生労働省が作成した下図などからもそうした背景が見て取れます。

被用者保険の適用状況の見取り図

参考)厚生労働省「働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題・2018年

適用拡大で注意が必要なパート、バイトは?

社会保険に入りたかったけど入れなかったパート、アルバイトにとっては適用拡大への動きは歓迎すべきことです。人によっては今の働き方を少し見直すだけでも会社を通じて社会保険へ加入できるかもしれません。

一方で、パート先の社会保険に入りたくない人は注意が必要になります。特に従業員規模の関係でこれまで社会保険に入らなくてもよかった勤め先が、2022年10月の制度変更で、社会保険に入らなければならない会社になるかもしれません。

社会保険加入の条件を今一度確認して、労働時間や月額賃金のコントロールなどを今から考えておきましょう。

ニュースを深掘り。適用拡大に反対しているのは誰?

社会保険の適用拡大にはみんながウエルカムかというとそうではありません。たとえば健康保険や厚生年金の保険料のおよそ半分は会社が負担します。パートやアルバイトが会社を通じて社会保険に入ることになったら、その会社は彼ら/彼女らの社会保険料の半分を負担しなければいけません。パートやアルバイトが多数在籍する会社では、その影響はとても大きくなります。中小企業にとってはもはや経営問題です。勤め先の従業員規模数によって条件に違いがあったのも、この点が考慮されていたためです。

社会保険に入れるようになったけど会社がつぶれた、ではシャレにもなりません。パートやアルバイトの多いサービス業界などは適用拡大に反対してます。倒産とまではいかなくても、会社の社会保険料の負担が増えると賃金そのものの減少やその他の福利厚生サービスの質の低下、さらには雇用そのものを減らそう、という動きが出ることも十分に予想されます。働く人のことを考えて行おうとしていることが、かえってその人たちを苦しめることも十分に起こりえるのです。

適用拡大は強制力を伴うものです。政府・厚生労働省が慎重に物事を進めるのはこうした背景があります。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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