パート、アルバイトも義務化!? 厚生年金の適用拡大【平成31年度版】

2019-09-11

 厚生年金の適用がパートやアルバイトにも拡大される。そんなニュースを耳にしたことはない?誰がどんな目的で?拡大するとどんなことがおこるのだろう。最新の情報も確認しておこう。

このページでパート・アルバイトの勤務先とするのは法人格をもつ会社で、個人事業所は含まないものとしています。

誰が、厚生年金の適用をどうしたいのか。

 厚生年金の適用を拡大したいのは誰か?政府・厚生労働省だ。理由に「パートやアルバイトが将来の年金を多く受け取れるようにする」「働き方の違いで年金受給に差が出ることの不平等の解消」などがある。問題の背景を眺めてみよう。

 パートやアルバイトに代表される非正規社員は2018年時点で働く人の4割近くを占めている。たとえばキミが厚生年金に加入しない非正規社員の道を一生かけて貫くとしよう。今の制度のままだと老後にもらえるのは国民年金だけだ。国民年金は満額もらえる人でも月の支給額は6万5千円を少し下回る水準だ。もしほかに資産がなかったら、この支給額だけで生活するのはとても難しいよね。こういう可能性のある働き方をしている人が全体の4割というのは見逃せない数値だと思わないかい。パートやアルバイトが厚生年金に加入できれば、老後は国民年金(基礎年金)にプラス厚生年金分が受け取れるようになる。安心感は高まるよね。

非正規社員の加入条件はどうなっているのか。

 現在の厚生年金の加入条件も整理しておいたほうがよさそうだね。パートやアルバイトに代表される非正規社員でも厚生年金に入れる人はいる。会社での1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上あることがその条件だ。非正規といっても実態は正規社員にかなり近いよね。ここまで働いていなくても次の条件をすべて満たせば厚生年金に加入できる。

従業員数が501人以上の会社で働く場合

・ 週所定労働時間が20時間以上
・ 月額賃金8.8万円以上
・ 1年以上の使用見込みがある
・ 学生等でない

従業員数が501人未満の会社で働く場合

・ 週所定労働時間が30時間以上
・ 月額賃金8.8万円以上
・ 1年以上の使用見込みがある
・ 学生等でない

 従業員数が501人以上の会社であれば週の所定労働時間が20時間以上であればいいのに、501人未満の会社ではそれが30時間以上に引き上げられている。勤め先の従業員数によってパートやアルバイトが厚生年金に入れる条件が変わるのは確かに不平等だ。

具体的に適用条件をどう変更したいのか。

 適用拡大はまず従業員数の引き下げがから行われる可能性が高い。実際、500人以下の会社でも労使合意があれば所定労働時間が20時間以上でも適用範囲になるという法律が2017年4月から実施されている。政府・厚生労働省としては従業員数の引き下げによる適用拡大を皮切りに、その後は週所定労働時間が20時間未満の働き手に対してもその範囲を拡げようとするだろう。厚生労働省が作成したこの図をみたらそう思わずには入られないよね。

被用者保険の適用状況の見取り図

参考)厚生労働省「働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題・2018年

誰が、なぜ反対しているのか。

 厚生年金の適用拡大にはみんながウエルカムかというとそうではない。厚生年金の特徴に保険料の半分を会社が負担してくれていることがある。パートやアルバイトであっても厚生年金に入ることになったら、その会社は厚生年金保険料の半分を負担しないといけない。パートやアルバイトがいっぱい在籍する会社からすればその影響はとてつもなく大きいよね。多くの中小企業はかなりのインパクトを経営に与えることになる。厚生年金に入れるようになったけど会社がつぶれた、じゃシャレにならないよね。たとえばパートやアルバイトの多いサービス業界は適用拡大に反対している。

 倒産とまではいかなくても、厚生年金への負担が増えると、賃金そのものの減少やその他の福利厚生サービスの質の低下、さらには雇用そのものを減らそう、という動きが出ることも十分に予想される。働く人のことを考えて行おうとしていることが、かえってその人たちを苦しめることも十分に起こりえるから、政府・厚生労働省もこの問題はこれまでも慎重に事を進めている。

適用拡大はいつ始まるのか。

 厚生労働省は「2019年9月までに適用拡大について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を実施」としている。これまでも適用拡大の動きは少しずつ進めてきたので、その総括を2019年9月にしよう、ということだ。その後は2020年の法案提出、法案が成立すれば最短で2021年にも新たな適用基準での施行も可能性としては考えておかなければならない。

適用拡大にむけた最新トピックス(2019年11月現在)

 2019年9月の厚生労働省の検討は、具体化への作業を本格化させる方針で決定した。これに先立って厚生年金の加入要件のうち、勤務先企業の従業員数を「501人以上」から引き下げるべきだとの報告書がすでにまとめられているので、今後はこのラインをどう設定するかが焦点となる。

 2019年11月時点で、従業員数を「501人以上」から「50人以上」か「20人以上」に緩和する両案が検討されている。 50人以上だと新たに厚生年金に加入するパートは約65万人、20人以上だと85万人になる見込みだ。今回の適用拡大について経団連や連合などは賛成、パートで働く人が多い外食産業でつくる日本フードサービス協会は反対する考えを示している。

 ライン設定は早ければ2019年11月末にも決まる見通しだ。

執筆者紹介

鈴木玲
ファイナンシャルプランナー

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