賃貸暮らしでうっかり忘れた。火災保険の更新し忘れがもたらす恐怖とは?

この記事は約5分で読めます。

家を借りるときの条件として、火災保険への加入が義務になっていることは多い。最初の契約時は不動産会社のフォローもしっかりつくので、加入し忘れということはほとんどないが、その家の契約を更新するときに、うっかり火災保険のほうだけ忘れるというケースが多い。もし、この記事を読んでいるキミが更新忘れの状況にあるなら、加入を急いだほうがいい。

火災保険の更新を忘れたときのリスク

更新忘れは本当にリスクが高いので、少し危機感を煽らせてもらうよ。どんなに注意をしていても火事を起こしてしまう可能性はあるし、もらい火で家が焼かれてしまうことだってある。火災保険未加入でそうなってしまったら、一体どうなるのだろうか?

火事に巻き込まれてしまったら

たとえば隣家からの出火で、自分の部屋が焼けてしまったら。被害は建物はもちろん、衣服や家電製品などの私物にも及ぶことだろう。

残念ながら隣家が明らかな出火元だとしても、それが故意または重過失によるものでなければ、隣人に被害の賠償を請求しても、隣人は法的にはその責任を負うことはない。これは「失火責任法」で定められていることだ。

このケースでは火災保険の対象に家財が含まれているかどうかがポイントになる。家財が対象になっていれば、契約時の保険金額に応じて、衣服や家電製品などの物的損害については補償される。逆に言えば、火災保険の更新を忘れていたら、たとえもらい火であったとしても、失った私物等はすべて自分で買いなおさなければならない。

なお、もらい火によって建物が被災した場合、その修復は大家さんが加入する火災保険で対応することになるので、この点はキミ自身が火災保険へ加入しているかどうかとは関係がない。

自分が火事を出してしまったら

自分が誤って火事を出してしまうことも可能性としてはゼロではない。この場合は、もらい火の時よりもさらにシビアだ。

まず建物について。たいていの契約書には賃借人の義務として貸室の善良な管理・保管とその貸室を原状回復して賃貸人に返還することが明記されているはずだ。火災を起こし建物に損傷を与えてしまうとこの義務に反することになる。その点で、大家さんに対しては賠償責任が発生する。こうしたリスクに備えるのが火災保険に含まれる「借家人賠償責任保険」だ。名前に「火災」がないけれど、実際的には火災への備えになっていて、火災以外の落雷や風災、雪災も保険事故の対象となっていることがほとんどだ。家を借りて住むときに一番重要な保険と言っていいだろう。

衣服や家電製品などの家財に対する損害はもらい火のときと同様、家財を保険の対象としているか、どれくらいの保険金額を設定しているかで補償内容が決まる。

もちろん、火災保険そのものの更新をし忘れていたら、「借家人賠償責任」も「家財」も何ら補償されない。まさに、すべてを失う状態になる。

更新をうっかり忘れてしまうのはどんなとき

どもそも、どうして火災保険の更新を忘れてしまうのだろうか。通常、保険会社からは火災保険が満期に近づくと更新の案内が届く。今は、郵送だけでなくメール登録をしておけば、メールによる連絡もあることがほとんどだ。

火災保険の更新の場合、住所移転によって郵便物が届かないということはないので、考えられるのは、郵便物の見落とし(ダイレクトメールと勘違いして破棄してしまうなど)か、更新前の何ヵ月間を留守にしていて郵便物を見れない時だ。

メールでの案内は郵便物以上に見落とされる可能性が高いし、メールアドレスが新居への入居に伴い新しいものに変わってしまっていることも考えられる。

更新し忘れを防ぐ方法

では、こうした更新し忘れをどう防げばいいか。なかなか難しい問題だ。火災保険に限らず、年単位で更新をしなければならないものは、よほど切実でない限り、どうしても忘れられがちだ。

物理的な対処法として考えられるのは、携帯電話やスマートフォンなどのカレンダーアプリを使って、更新日が近くなったらアラートが出るように設定しておくことだ。1年、2年先でも設定でき、日常的に持ち歩くものなので、見落としも少ない。機種変更が懸念事項だが、目下のところ防止策としては最適な方法だと思う。

もうひとつ、意識を高くもっておくということも重要だ。火災保険の更新が忘れられがちな理由のひとつは、不動産会社が勧めるものをそのまま契約してしまうことが挙げられる。ほとんど会社名も見ずに契約している人も少なくないようで、これではその会社から届いた書面をDMと勘違いしてしまうことは、いかにもありそうなことだ。

過剰な火災保険は更新時に見直しも

もし、更新し忘れた状態(無保険)になってしまっているなら、すぐに対策を取ろう。このとき、これまで入っていた火災保険を更新する、という考えをする人が多いが、一度保険が切れてしまったら更新ではなく新規扱いだ。だから以前の会社にこだわる必要はない。

不動産会社で進められた保険に入っていたなら、これを機に見直しをしてもいいだろう。家を借りている人にとっては、家財と借家人賠償責任に対する補償が特に重要なのだが、なかには持ち家の人が加入するようなリッチな保険に加入しているケースもある。補償が多いとその分、保険料もアップする。家を借りる人には必要のない補償が含まれていることがあるので、そうした見極めは必要だ。

この点についてもっと知りたい人は「賃貸の火災保険は過剰補償?自分で選ぶ人だけが知っている本当に必要な保険の中身」の記事を見て欲しい。

自分で頭を使って比べた火災保険なら、1年や2年たっても記憶には残るはずだ。それが更新し忘れを防ぐことにも繋がる。

また、保険会社のなかには更新を自動で行うところもある。これはこれで覚えておかないと問題にはなるのだが、それらを踏まえてどうするか自分で考えることが何より大切なことなのではないだろうか。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

タイトルとURLをコピーしました