医療費の負担が大幅減。高額医療費はいつ振り込まれる?

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公的医療保険には毎月の医療費が一定額を超えるとそれ以降の医療費は保険が全額負担する高額医療費支給制度(または「高額療養費制度」)があります。この制度のおかげで被保険者の医療費負担が青天井に上昇することは抑えられ、生活が守られているのです。この記事では高額医療費を利用する際のお金の流れを説明します。

加入している保険次第?高額医療費の手続き

高額医療費とは所得に応じて設定される自己負担限度額の超過分を指します。この超過分の扱いは、被保険者が窓口で払った分をあとから精算する方法と、あらかじめ限度額適用認定証を取得し、限度額以上の支払いを窓口でしなくていいようにしておく方法とがあります。一般的には月の医療費が突発的に上昇してしまったことで高額医療費の手続きをすることが多くなるため、この記事では前者の精算による方法について詳しく取り上げます。精算の方法は加入する保険によって異なります。代表的な方法は以下のものです。

手続きなしでお金を戻す方法

健康保険組合(健保)の一部が採用している方式です。被保険者の医療費負担が自己負担限度額を超えたかどうか、またその金額がいくらになるか組合が確認、計算して還付までを行います。被保険者が行うことは何もありません。大手企業の健康保険組合に見られる方法です。

手続きをしてお金を戻す方法

国民健康保険(国保)のほぼすべてと健保の多くは被保険者の手続きを経て、超過分を還付します。

被保険者は「高額療養費支給申請書」(名称は保険によって異なります)を記入し、保険者へ提出します。保険者が条件に該当する被保険者へ申請書を郵送し、被保険者は必要事項を記入のうえ返信するだけという保険もあります。その場合は自分で金額等を確認する手間が省けます。

申請書のフォーマットは保険者によってバラバラです。また、添付する書類に医療機関の領収書を必要とするか、必要な場合それは原本なのかコピーなのかなど統一のルールはありませんので、自分が加入する保険へ確認が必要になります。

返金額に差が付く。健康保険の付加給付制度

一部の健保では高額医療費支給制度に独自の付加給付制度(「一部負担金払戻金」「療養費付加金」という呼称もあります)を加えるところもあります。なかには、高額医療費だけだとおよそ8万円/月の限度額が、この付加給付制度で2.5万円/月にまで引き下げる組合もあるほどです。

付加給付制度があって、払い戻しのための手続きが必要な健保に加入しているときは、自己負担限度額がいくらなのか、把握しておく必要があります。

残念ながら協会けんぽや国保にはこうした付加給付制度がないため、付加給付制度がある健保と比べると返金される医療費の額に大きな差が付くことになります。

高額医療費が振り込まれるまでの目安

では、高額医療費は手続きからどれくらいの期間で振り込まれるのでしょうか。代表的な例は治療月から3ヵ月経過してからです。これは医療機関から保険者へ医療費請求が行われるのが診療月から3ヵ月後になっていて、保険者はそれをもとに高額医療費の還付をするかどうか審査し、決定するためです。医療機関の手続きが遅れたり、内容に不備や確認事項がある場合は3ヵ月を超えることもあります。

また、国保では自治体が申請書を被保険者へ送り、それを返信する形で手続きを行うケースが多くありますが、この場合、申請書が届くのはおおむね受診月の3ヵ月後となっています。届いた申請書に必要事項を記入し返信すれば、数日から1週間程度で振り込みを行う自治体が多いようです。

このように高額医療費の振り込みには一定の期間が必要となるため、生活資金が心もとなくなることも考えられます。こうした事態を見越し、たとえば協会けんぽなら高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」を備えています。キャッシュのやりくりに不安がある人は、を加入する保険へこのような制度があるかを確認してみましょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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