所得税が10パーセントになる年収は? 税金との上手な付き合い

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所得税が10パーセントになるのは、課税所得が195万円から329.9万円までのときです。では、これを年収に当てはめると、いくらになるのでしょうか。

課税所得と年収の違い

課税所得とは、年収から必要経費(給与所得の場合は給与所得控除)と所得控除を除いたものです。課税所得が分かっているなら逆算して年収は出せるでしょうか。次のように式にすると分かりやすいです。所得税が10パーセントになる課税所得195万円から329.9万円のときの年収はいくらになるのでしょうか。

年収-(必要経費+所得控除)=課税所得

課税所得+(必要経費+所得控除)=年収

実は、課税所得から年収を逆算して出すことは簡単ではありません。その理由は、必要経費や所得控除が人それぞれ違うからです。課税所得から年収を導くにはあらかじめ条件設定をする必要があります。

会社員に共通する必要経費と所得控除

ここでは、年収を逆算するための条件設定として、会社員であれば一部の例外を除き、だれもが関係する必要経費と所得控除を取り上げます。

必要経費

会社員の必要経費は給与所得控除という形で認められています。給与所得控除は実際にかかった必要経費ではなく、年収に応じた計算式によって決まるものです。たとえば年収が162.5万円以下なら「55万円」、180万円以下なら「年収×40パーセント-10万円」と言った具合です。

今回は課税所得が195万円から329.9万円の場合を想定していますので、次のいずれかが給与所得控除の対象になる可能性が高いです。

年収給与所得控除額
180万円超から360万円以下年収×30%+80,000円
360万円超から660万円以下年収×20%+440,000円
660万円超から850万円以下年収×10%+1,100,000円

所得控除

所得控除のうち、一般の会社員(合計所得金額が2400万円を超える会社員を除く)なら、だれでも満額控除できるのが基礎控除と社会保険料控除です。

基礎控除は2020年に額が引き上げられ、所得税に関しては48万円が控除額になります。

社会保険料控除は1年間に支払った健康保険料(介護保険料)、厚生年金保険料、雇用保険料の合計金額をすべて控除できます。社会保険料は給与額のほか、年齢、勤務先、職種などによって変わります。一律で金額や割合を提示することができないのです。そこで、この記事では目安として年収の14.5パーセントを社会保険料として考えることにします。

会社員で最低限の所得控除だけを利用した場合の年収

もう一度、課税所得から年収を逆算する計算式を思い出してください。

課税所得+(必要経費+所得控除)=年収

必要経費には給与所得控除を、所得控除には会社員が必ず利用できる基礎控除と社会保険料控除を当てはめて、課税所得が195万円から329.9万円の場合の年収を計算してみましょう。

課税所得195万円の年収

課税所得195万円
必要経費(給与所得控除)年収【x】×30%+80,000円
所得控除(基礎控除+社会保険料控除)48万円+年収【x】×14.5%

上の数値を計算式に当て込むと次のようになります。

195万円+{(年収【x】×30%+80,000円)+(48万円+年収【x】×14.5%)}=年収【x】

計算の結果、年収【x】は452.3万円になりました(小数点第二位四捨五入)。

課税所得329.9万円の年収

課税所得329.9万円
必要経費(給与所得控除)年収【x】×20%+440,000円
所得控除(基礎控除+社会保険料控除)48万円+年収【x】×14.5%

上の数値を計算式に当て込むと次のようになります。

329.9万円+{(年収【x】×20%+440,000円)+(48万円+年収【x】×14.5%)}=年収【x】

計算の結果、年収【x】は644.1万円になりました(小数点第二位四捨五入)。

想定年収は452.3万円から644.1万円

今回のシミュレーションでは、課税所得が195万円から329.9万円のときの年収は452.3万円から644.1万円になりました。所得控除を基礎控除と社会保険料控除のふたつだけにしていること、また社会保険料控除額は年収の14.5パーセントという仮の値で計算していることが前提ですので、人によってはこれに当てはまらないケースも十分考えられます。

所得控除が増えれば、年収が452.3万円の人でも所得税の税率がひとつグレードを下げた5パーセントになることはありますし、年収が644.1万円を超えていても、所得税の税率10パーセントにとどまることもあります。

所得税の税率を確認しよう

今回は所得税が10パーセントになる年収を確認しました。あらためて所得税の税率を確認しておきましょう。税率は課税所得額に応じて7段階にグレード分けされています。控除額とセットで覚えおくとよいでしょう。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。