新卒で副業をするときの注意点。4つの正攻法でトラブル防止

この記事は約9分で読めます。

正社員でも副業を認める会社が増えています。この記事では正しく副業をする上での注意点をまとめています(副業がばれないように指南したり、おすすめの副業を紹介する内容ではありません)。とくに新卒では分かりづらい税金の仕組みについて、本業・副業それぞれの視点から解説をしていきます。

副業には会社の許可が必要

副業を認めている会社でも、職種や時間などに関係なくなんでもかんでも認めます、とはなっていないことがほとんどです。同業種で働くことを禁じていたり、会社で得た知見を開示することを厳しく制限する会社もあります。正当な副業をするならきちんと会社のルールに即していなければいけません。

新卒のなかには、在学中からインターネットを利用したブログ、アフィリエイトなどで利益を得ている人もたくさんいるでしょう。こうした所得があることも、副業の一種になりますので、入社前に必ず会社に報告して許可を取るようにしましょう。金額も少ないし、趣味の範囲だから大丈夫だろうと思っていると、それこそ後で会社にばれたときにトラブルに発展しかねません。

副業に関する会社での相談窓口は、人事部や総務部などになります。

税金の仕組みを理解する

副業をする人に共通する注意点は、税金に関することです。「副業=お金を稼ぐ=税金を納める」。これは本業でも副業であっても同じです。

収入が本業(ここでは会社勤めによる給与)のみであれば、税金を納める方法はさほど難しくありません。税額の計算から納付まで、かなりの部分を会社側が手助けしてくれます。

しかし、副業の場合、第三者の手助けは期待できません。手続き等は自分で行わなければなりませんし、場合によっては本業の方との調整も必要になってきます。副業をしている人には、税金の知識が不可欠なのです。

お金を稼ぐことと結びつく税金は「所得税」と「住民税」です。それぞれどのような税金なのか見ていきましょう。

会社勤めの人の「所得税」

まず、本業(会社勤め)のケースを例に所得税について説明します。

所得税における「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことを言います。所得はどうやってその収入を得たかによって10種類に分類されます。会社員が給与や賞与によって得る所得は給与所得です。

給与所得の場合、会社員が領収書やレシートをもとに必要経費を計算することはほぼありません。収入金額に応じていくらを必要経費とするかが法律で決まっているからです。この必要経費のことを「給与所得控除額」と言います。

式で整理すると「収入-給与所得控除額=給与所得」になります。

ここまでのことから、収入と所得では所得の方が必ず小さな数値になることが分かります。

所得からはさらに税金がかからない金額を除外することができます。これを「所得控除」と言います。新卒一年目で所得控除の対象となるのは「基礎控除」と「社会保険料控除」、ほかに「生命保険料控除」「地震保険料控除」「医療費控除」などが考えられます。所得からこららの控除を除いたものに決められた税率をかけることで所得税額が決定します。所得税では課税所得金額が高い人ほど税率が高くなります。この仕組みを超過累進課税と言います。

長々と所得税額が決まるまでの流れを説明してきましたが、最初に言ったとおり会社勤めの人はこのほとんどを会社が手助けしてくれるので、あまりやることはありません。

自らやることと言えば、「所得控除」に該当する項目を申告するくらいです。これをするのが「年末調整」と呼ばれる作業です。その名のとおり年末(11月)に行います。会社が用意した書類に必要事項を記入するだけなので、大変な作業ではありません。どんな所得控除があり自分が利用できるのかどうかも、この書類を見れば大半の人は間違いなく申告できるはずです。

所得税の納付方法についても触れておきましょう。所得税は源泉徴収と言って、給与や賞与をもらう際に会社側が税金相当分を引いて代わりに納税してくれています。所得税は1年間の所得に関してかかるものなので給与や賞与の都度引かれるのはあくまで暫定額で、だいたいは多めに払っています。年末調整をすることで払い過ぎていた税金は戻ってきます。

会社勤めの人の「住民税」

続いては住民税です。住民税には所得税と似たところ、まったく違うところがあります。

似たところは、課税所得計算までの流れです。収入から給与所得控除額を引いて給与所得を出すところまでは同じです。所得から引くことができる所得控除は金額など一部異なる点はありますが、考え方自体は所得税も住民税も変わりません。

式にすると「収入-給与所得控除-所得控除=課税所得金額」になります。

異なる点の第一は、住民税には所得割と均等割(一部の地域では資産割もありますが、ここでは割愛します)があることです。

所得割は課税所得金額×10%で計算します。所得税は課税所得金額が高い人ほど税率が高くなる超過累進課税でしたが、住民税の所得割は税率が一律で決まっています。一方、均等割は課税所得金額に関係なくひとり5,000円です(一部地域を除く)。この所得割と課税所得金額を合わせた額が住民税になります。

余談ですが、一般的な新卒の年収なら所得税よりも住民税のほうが負担額は高くなります。所得税の方が高くなるのは年収が800万円を超えるあたりからです。このことを知らないサラリーマンは意外と多くいます。

もうひとつ、所得税との違いであげられるのは「住民税には源泉徴収がない」ということです。住民税は1年間の所得が確定し、それに基づいた税額を計算したのちに徴収が始まります。会社員であれば2020年の所得に対する住民税は、2021年6月分から2022年5月分までの給与から12回に分けて天引きします。

勘が鋭い人は気づいたかもしれませんが、このルールが適用されるため新卒1年目は住民税の支払いが発生しません。この点を知りたい人は「『住民税0円』のカラクリ。新卒は住民税をいつから払う?」をご覧ください。

所得税は所得が発生すると同時に源泉徴収して最後に税額の辻褄合わせをしていましたが、住民税は1年間の所得とその税額がはっきりした後に徴収しています。納付の仕方がまったく違うのです。

副業で注意する税金のこと

新卒の場合、本業での税金の仕組みがハッキリしていない人も多いため、長い前置きになりましたが、まずは本業を例に所得税・住民税について説明しました。

ここからは副業の税金についてです。ここでも所得税と住民税に分けて考えてみましょう。

副業の「所得税」

まずは副業が10種類ある所得のなかのどの所得に該当するかです。副業所得という所得はありません。そもそも税法には「副業」という言葉は存在しないのです。一般には収入源が複数あるときに、額の少ないほうを副業と呼んでいます。

そう考えると、副業にはいろいろな種類があることになります。いくつか例を上げてみましょう。

  • パートやアルバイト→給与所得
  • ネット記事の執筆→雑所得または事業所得
  • 仮想通貨取引などによる収益→雑所得
  • 個人で制作したものの物販→雑所得
  • ネットオークションやフリマアプリの売上→雑所得
  • アフィリエイトによる広告収入→雑所得
  • 不動産経営→不動産所得

これらを副業でする場合に共通するのは、本業では会社がしてくれた税額の計算や納付額の調整(年末調整)を自分でしなければならないという点です。これを、確定申告と言います。

副業の所得も収入から経費を差し引くことができます。ただし、本業で対象とした所得控除をもう一度副業のほうでも控除することはできません。

副業の20万円ルール

副業では所得額が20万円を超えるかどうかが、ひとつ大きな分岐点になります。というのも、副業所得が20万円以下であれば、確定申告をしなくてもいい、という決まりがあるからです。確定申告をしない、ということはその分の所得に対しては所得税がかからないということです。このルールは副業の種類(給与所得、雑所得、事業所得など)に関係なく適用されます。

ただし、副業が給与所得の場合、所得が20万円を超えていなくても源泉徴収によって給与から所得税がすでに引かれている場合もあります。その場合は、確定申告をすることで納付済みの所得税が戻ってくる(還付される)ことがあります。

副業の「住民税」

所得税は本業は年末調整で、副業は確定申告でと、それぞれ別に計算し納付することができました。しかし住民税は少し事情が異なります。

先に住民税は「1年間の所得が確定し、それに基づいた税額を計算したのちに徴収が始まります」と説明しました。この場合の1年間の所得とは本業と副業を合算したものです。年末調整で確定した本業の所得に、確定申告による副業分の所得が加算され、ようやく住民税の計算が始まるわけです。

また、住民税は翌年6月から1年間にわたり(本業の)給与天引きによって納税するものだということも思い出してください。これは、副業分の所得にかかる住民税は本業の給与から天引きされる、ということを意味しています。

副業の収入が多い人は本業から天引きされる住民税額の負担割合が多くなります。これは、副業していることやその稼ぎが会社にばれる要因としてよく説明されることです。

副業の20万円ルールは住民税には適用されない

所得税とのもうひとつ大きな違いは、副業所得が20万円以下でも住民税はかかる、ということです。所得税では20万円以下の副業所得は確定申告不要でした。これでは副業で実際にいくら収入があったのか、住民税の計算をする市区町村が知ることができません。

そのため、副業所得が20万円以下で確定申告をしなかった人は、自分で役所に赴き、副業所得を申告しなければなりません。申告時期は原則2月16日から3月15日までです(確定申告もこの日程です)。

住民税の窓口は市区町村となるため、確定申告のように統一したフォーマットでルールも一本化されているわけではありません。申告書の書き方や添付する書類などは役所へ確認しましょう。

副業分の住民税を本業の給与から天引きせずに、別に自分で納めるようにすることも可能です。これを住民税の普通徴収と言います。申告書に納税の仕方を選ぶチェック項目がありますので、自分で納税することを希望する場合は、必ず「普通徴収」にチェックを入れるようにしましょう。副業の所得額を会社に知られることに抵抗がある人は普通徴収を選ぶといいでしょう。

適切な納税を心がける

ここまでの話を整理し、副業の所得税・住民税についてまとめてみましょう。

原則は確定申告を行うことです。所得税はこのタイミングで納税額が分かりますので、納税も同時に行います。納税の仕方は自分で金融機関に言って振り込む方法が一般的です。

住民税の納税は所得税よりも後になります。通常は該当年度の翌年6月からの納税です。何もしなければ本業の給与から天引きされる形になります。

副業の所得額が20万円以下かどうかも重要なポイントでした。20万円以下であれば所得税は申告不要なので何もすることはありません。しかし住民税については20万円以下でも役所へ申告に赴かなければなりません。納税は本業からの天引きもしくは自分で別に払うか、どちらかを選びます。

新卒で入っていきなり副業をすることに違和感を覚える人が多いのも事実ですが、会社が認めているのであれば、家計の助けにもなりますし、社会の仕組みを実践的に勉強するという意味で役に立つこともたくさんあります。適切な税務処理を行い、堂々と副業を続けられる環境を自分で作り上げるように心がけましょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

タイトルとURLをコピーしました