18歳のイチ社会人でも分かる。「所得税の独学勉強法」

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税理士やFPになる予定はない。役所の税務担当でもない。何事もプロにはプロの、そうでない人にはそうでない人のための勉強法があります。イチ社会人に必要な、実践的な所得税の知識を身につける方法をまとめました。

この記事の前提条件や使用する言葉について。このページは会社員(契約社員やアルバイトも含む)や公務員として働き、給与を得ている人を主人公として想定しています。彼らを「給与所得者」という言葉でまとめます。

方法その1:所得税を目撃せよ!

所得税を知ろうとするなら、まずは自分が払う所得税を見るところから始めましょう。1年間働いていったいどれくらい税金を払うのか。収入の何%? 働いている人が所得税を「目撃する」のは簡単です。年に一度、勤め先からもらう源泉徴収票に書いてあります。ここから1年間の所得税の額を見つけられるようにしましょう。

年末調整の見本

毎月の給与明細にも所得税の項目はあります。たとえばこんな感じです。

給与明細の見本

自分が払った所得税額は、1年分をまとめてみる源泉徴収表と月ごとの給与明細のふたつで確認できることがわかりました。 ただし、源泉徴収票も給与明細も記載されている所得税額は暫定値であって確定したものではありません。現時点では暫定値である、ということが頭の片隅に残しておいてください。

方法その2:所得税の算出フローを理解する

さて、あなたが目撃した所得税。所得税の知識を正しく活用すれば、この額を少なくする(節税する)ことができます。この所得税の知識は一度覚えると毎年役に立つツワモノです。ただFPのようなおカネのプロでさえも、所得税は覚えるのに四苦八苦します(少なくとも私は)。たとえば所得税の計算式です

 課税所得×所得税率=所得税

計算式そのものはシンプルです。やっかいそうなのは「課税所得」。所得ではなく課税所得。いかにも難しい感じがします。課税所得を辞書で調べたら「所得税の課税対象となる所得」と出てきました。混乱3割増し。

簡単な所得税の計算式が記憶に定着しないのは、言葉の意味とその背景が分かっていないからです。 裏を返せば、そこをクリアできれば理解は一気に進みます。

所得税の計算で、似たような言葉がどのように変化していくか見てみましょう。これは税額を計算するときのステップとして必要なものです。

所得税計算フロー

⑤の「差引税額」が最終的に納める所得税の額です。

①から順にたどっていきましょう。①の「収入」は基本給に残業代や役職手当などの諸手当を加えたもの。働いた対価としてもらうものすべてです。額としては一番大きくなります。

②では「所得」の性質をおぼえることがポイントです。所得とは、収入から経費をひいたものです。だから所得が年収を上回ることはありません。「年収>所得」は絶対です。

③の「課税所得」は所得のうち税金の対象となる所得です。一般的に所得税を節税しようと思ったら、税金の対象となる所得を減らす作業をすることになります。上図の「所得控除」をできるだけ活用し課税所得を少なくしていくのです。

④は計算式によって導き出される「所得税」です。ただしこれで終わりにはなりません。

⑤の税額控除があればそれも税金から除くこともできます。ここも節税できるポイントのひとつです。こうした最終的に出てくる「差引税額」が所得税の納付額になります。

もしすべてを覚えるのが難しいようであれば①から③の「収入」「所得」「課税所得」の違いが分かるだけでも、かなりの前進です。

方法その3:節税視点で所得税のフローを覚える

まだモヤモヤしてる人もいるはずです。それが普通です。少しずつおぼえていきましょう。今度は図の右側、オレンジ色の部分にフォーカスしてみます。

②で登場するのは「経費」。経費とは収入を得るために必要とされる費用のことです。経費が多くなると所得は少なくなります。所得が少なくなると所得税はどうなるでしょうか? そう、少なくなりますね。だから経費をきちんと計上することはとても大切です。

③の「所得控除」は全部で15種類あります。さきほども説明した通り、所得控除が多くなると課税所得は少なくなります。課税所得が少なくなると…、もちろん所得税も少なくなります。

  • 経費を増やして、所得を減らす。
  • 所得控除を増やして、課税所得を減らす。

所得税率と累進課税制度

最後に所得税率についてです。日本では課税所得額が増えるとそれに比例して所得税率がアップします。「おカネいっぱい持ってるんだから、ちょっと多めに税金を払ってください」という考え方です。この仕組みを「累進課税制度」と言います。所得税には便利な速算表があります。累進課税制度がよくわかる表です。

課税所得金額税額
195万円以下×5%
195万円超 ~ 330万円以下×10% - 97,500円
330万円超 ~ 695万円以下×20% - 427,500円
695万円超 ~ 900万円以下×23% - 636,000円
900万円超 ~ 1,800万円以下×33% - 1,536,000円
1,800万円超 ~ 4,000万円以下×40% - 2,796,000円
4,000万円超×45% - 4,796,000円

まとめ

所得税が決まるプロセス。イメージできましたか?「収入」「所得」「課税所得」の違いが分かるまでは、繰り返し読んでほしいところです。

まずは一歩ずつ前進しましょう。今後、より実践的な所得税の節税を学んでいけば、このページで説明したことへの理解も一気に深まるはずです。多少のモヤモヤは無視して先へ進んでも問題ありませんよ。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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