バイトを掛け持ちする学生は確定申告をする?しない?

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バイトでお金を稼いだら税金を納める必要があります。学生であってもそれは変わりません。学業の合間にお小遣いを稼ぐ程度のバイトであれば税金がかからないので、とりたてて何もする必要はありません。生活費の大半を稼ぐ規模で働いている場合は、税金のことを頭に入れておいたほうがよいでしょう。特にバイトを掛け持ちしているときは税金の手続きが煩雑になることがあります。この記事で紹介する確定申告もそうした手続きのひとつです。どんな人が確定申告をするのか。手続きの仕方や注意点などを確認しましょう。

掛け持ちバイトはほかのバイトと何が違うのか?

バイトを掛け持ちするとは、同時期に複数のアルバイトをしていることを意味します。たとえば月・水・金曜日は飲食店で、土曜日は倉庫でそれぞれバイトをしているようなケースです。この記事でも基本的にはこのような働き方を「掛け持ちバイト」と定義して話をします。 

では、掛け持ちバイトをしている人と、ひとつのバイトしかしていない人との違いを整理しましょう。 

ひとつのバイトをしている人のお金の流れ 

まずバイト先が1社だけの人の税金について整理しましょう。給与は月に一度でその金額は働いた時間によって決まるものとします。1年(1月1日から12月31日)という時間の中でお金の動きを見ると、次のようになります。

  1. 月に働いた時間等に応じて給与が決まる 
  2. 給与をもとに会社が源泉徴収する税額が決まる 
  3. 給与から源泉徴収分を差し引いた金額が銀行へ振り込まれる 
  4. 源泉徴収分は会社が税務署へ納める 
  5. 11月(または12月)の年末調整で、1年間の税額を計算する 
  6. 源泉徴収額のほうが多かったら、超過分が戻ってくる 

1から4は月々のことで、5と6は年に1度行われます。バイト本人が直接作業にかかわるのは、5の年末調整です。内容は会社が税額を計算するために必要な情報を伝えるだけです。本人が直接税額を計算するわけではありません。 

この流れにいる限り、税金に関するほとんどの作業は本人を介さなくても進むようになっています。 

掛け持ちでバイトをしている人の違い

では掛け持ちでバイトをしている人のお金の流れを、上で示したひとつのバイトをしている人との違いで説明します。 

1から4は掛け持ちバイトでも同じです。ただし、掛け持ちバイトでは特に稼ぎのメインとなっていないほうのバイト先では、給与が少ないため源泉徴収がないことが起こりえます。またメインのバイト先とそん色ない額の給与があったときでも、源泉徴収額が少なくなることがほとんどです。 

5と6の年末調整ですが、年末調整を行うのはバイト先のいずれか1社のみです。通常、これはメインの収入があるバイト先で行うことになります。この違いはとても重要です。なぜならこの違いこそが、掛け持ちバイトが確定申告をする直接的な理由になっているからです。次の章でより詳しい説明をします。 

掛け持ちバイトが確定申告をする理由 

ここで、税金を計算するときのフローを確認しておきましょう。

5の差引税額にあたるものが最終的なその年に負担する所得税額になります。税額控除がなければ(ない人のほうが多数です)、4の所得税がそのまま負担する所得税額です。 

毎月の源泉徴収は所得税額が正式に決定する前に差し引かれるものです。この計算フローに従って正確な計算をしたところ源泉徴収で納めた税金が実際の税額よりも多かった、ということがよくあります。その確認をするのが年末調整の役割です。 

話を掛け持ちバイトに戻しましょう。掛け持ちバイトでもメインの会社であれば年末調整をしてくれますが、それはその会社単独での収入、源泉徴収をもとに行われるものです。ほかの会社でいくら稼いだのか、源泉徴収をいくら支払い済みなのかは加味されません。そのため、最終的には本人がすべてのバイト先での実績を考慮し、その年の所得税額を計算しなければなりません。それが確定申告です。年末調整で会社が行ってくれる上図のフローを使った税額計算を、自分でやらなければならないのです。 

確定申告の具体的な作業については後の章で説明します。 

確定申告したら税金は必ず戻ってくる?

わざわざ確定申告をするわけですから、できれば税金が戻ってくると嬉しいのですが、実際はどうなのでしょうか。考えられるいくつかのパターンを紹介します。 

税金が戻ってくるケース1

合計年収が130万円以下で、いずれかのバイト先で源泉徴収がある。

学生で、合計年収が130万円以下の場合、所得税はかかりません。源泉徴収によって前払いした税金は、確定申告をすることですべて戻ってきます。

税金が戻ってくるケース2 

合計年収が130万円超で、すべてのバイト先で源泉徴収がある。

所得税額よりも源泉徴収額のほうが多い可能性があります。確定申告をすることで超過分が戻ってきます。 


確定申告をすることで、税金を払わなければならなくなることもあります。 

税金を払うケース

合計年収が130万円超で、すべてのバイト先で源泉徴収がない。

学生で、合計年収が130万円超の場合、所得税がかかります。源泉徴収していないということは、まだ税金を納めていないということです。確定申告で所得税額を計算し、自分で納税します。

学生だけが利用できる勤労学生控除とは? 

税金が戻ってくるかどうかのポイントとして「年収130万円」という数字をあげました。これについて解説を加えます。 

今一度上の図を見てください。収入からは経費が、所得からは所得控除が差し引かれるようになっています。アルバイトの場合、(収入額にかかわらず)経費は55万円まで認められています。また所得控除にはほぼ全員が対象となる基礎控除(48万円)と、学生だけが利用できる勤労学生控除(27万円)があります。これらを合算した額が130万円です。つまり学生の場合、収入が130万円以下であれば課税所得はゼロになるため、所得税はかからなくなるのです。 

なお、主婦やフリーターなどのバイトやパートでは課税所得がゼロになる収入は103万円です(勤労学生控除の27万円分がなくなるため)。よくパートやアルバイトの人が「103万円の壁」などと言うのはこのことを指しています。 

掛け持ちバイトでも確定申告をしないケース 

ここまでの説明から掛け持ちでバイトをしていたら無条件で確定申告が必要になる印象を持ったかもしれませんが、必ずしもそうではありません。バイトの合計年収が103万円以下で、すべてのアルバイト先で源泉徴収がないケースなら確定申告は不要です。 

少しややこしいものとして次のようなケースも考えられます。メインのバイト先で年末調整があり、合計年収が130万円以下で、メインではないバイト先では源泉徴収がされていないケースです。合計年収が引き上げられたのは年末調整によって勤労学生控除の利用が申請できているからです。 

確定申告の基本

確定申告の手続きについて基本的な事項を確認しましょう。

期日

  • 税務署への提出:2月16日から3月15日
  • 対象期間:前年の1月1日から12月31日までの1年間

流れ

  1. 必要な書類の準備
  2. 確定申告書の作成
  3. 確定申告書の提出
  4. 還付または納税

年末にアルバイト先の会社が発行する「給与所得の源泉徴収票」は確定申告書を作成するときに使う大切な書類です。無くさないように注意しましょう。

申告書の作り方

作り方はいくつかありますが、国税庁が公開している「確定申告書作成コーナー」を利用することをお勧めします。書類作成の方法や、入力の順番、数字を入れる場所の案内があります。手順に沿って書類を作成できる仕組みです。オンラインで作成した書類をプリントアウトすれば完成です。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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