保険証が手元にない。病院で診察できる?治療費はいくら?

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病院や薬局で提示を求められる健康保険証。もし手元に保険証がないまま病院にいったらどうなるのでしょうか。診察は受けられる?治療費はいくら払うの?保険証がないときに起こりうることをまとめました。

保険証がないときの病院の対応

健康保険証が手元にない理由は人によって様々ですが、大きくは保険証を忘れたケースと、健康保険へ未加入のケースのどちらかでしょう。

保険証を忘れただけならば患者さんが公的健康保険に加入していることに変わりはありません。病院は病気やけがに対して保険診療を行います。

保険診療とは病気やけがに対しての治療方法、それにかかるお金(治療費)、処方する薬の内容などが規定によって決められている診療です。ルールが定められていることで同じ病気・けがであれば日本のどこで治療を受けてもその治療内容や治療費に大きな違いが出ないようになっています。

一方、公的健康保険へ加入していない場合は、どのような治療を患者さんに行うかは病院が自由に決められます。これを自由診療と言います。保険診療のように治療内容、治療費が定まっていないので、どんな治療になるか、治療費がいくらになるか定かではありません。もちろん患者さんの同意があることは前提ですが、治療を受ける側からすると少し心配になります(自由診療のすべてが悪い訳ではありません。たとえばがん治療における先進医療や未承認の抗がん剤の使用などは自由治療です)。

保険証がないときの支払額はいくら

公的医療保険への加入の有無で、診療内容が変わる可能性について話しをしましたが、治療費については保険証の有無で変わることはあるのか、確認してみましょう。

保険証がある場合、病院の窓口で患者さんが払う費用は医療費の3割が基本です(年齢によって2割や1割の場合もあります)。残りの7割は保険が負担します。

公的医療保険へ加入していなければ医療費はすべて(10割)患者さん自身の負担です。

では、保険証をたまたま忘れたケース(公的医療保険へ加入はしている)ではどうなるのでしょうか。この場合は治療費のすべて(10割)を患者さんが「立て替え払い」します。立て替えなので、保険負担分は後で戻ってきます。

立て替えた保険料の返金手続きの仕方

保険証を失念したため、病院の窓口で立て替えたお金はどのような流れで戻ってくるのでしょうか。病院で診察を受けるところから順番を整理すると次のようになります。

  1. 病院で診察を受ける(保険証なし)
  2. 診察後に窓口で医療費の全額を払う
  3. 後日、精算手続きをする
  4. 窓口で払った医療費の7割が戻ってくる

精算手続きの方法は加入している保険によって異なりますが、その説明の前に大切なことがひとつあります。2の窓口で医療費を払ったときに引き換えに受け取る領収書と診療明細書は必ず原本を手元に残しておくようにしてください。いずれの精算手続きの際にも必要となります。

では、保険ごとの手続きの方法を説明しましょう。協会けんぽであればけんぽのホームページから「療養費支給申請書(立替払等)」をダウンロードし、必要書類とともに加入している支部へ郵送します。お金は指定した振込先に戻ってきます。企業の健康保険組合もほぼ同様の手続きになります。会社によっては担当部門が手続きの窓口となってくれることもあるようです。

国民健康保険の場合はどうでしょうか。住んでいる役所によって多少の違いはありますが、基本的には必要書類と健康保険証、判子を持って国民健康保険の取り扱い窓口へ行き手続きをすることになります。その場で返金ではなく振込になることが一般的なので、世帯主の振込口座が分かる書類も持って行きましょう。

どの保険であっても申請、確認、返金の流れがあるので一定の時間がかかります。書類を用意したり、申請書を書いたりするのも手間です。

そこでもっと簡単に返金をしてもらえる方法として確認して欲しいのが病院での精算が可能かどうかです。多くの病院で当日または後日、健康保険証と必要書類を持参すればその場で現金で返金してもらえます。継続的に治療をしているケースなどでは次回の診察日でも大丈夫かもしれません。ただし一定の期間を経過してしまったり、来院が診療日の翌月になる場合などは病院での返金ができないこともあります。病院での返金を希望するなら必ずその期日を確認しましょう。

保険証がない理由とその対応

保険証を持たずに病院へ行ってしまう理由に、保険の切り替え時期に当たってしまったため、というものがあります。転職で加入する保険がA社の健康保険からB社の健康保険へ変わるときや、退社して健康保険から国民健康保険へ切り替えたときなどです。

切り替え後の保険に入っているけれど、手続き中のため保険証がないという状況であれば、大きな問題はありません。上で説明した「立て替え払い」が可能だからです。

問題は切り替えの狭間で保険に入っていない空白期間が生じているときです。たとえば転職によってA社からB社へ移るまでの間に数日から数週間程度の空きが出ることは珍しいことではありません。また会社を辞めた後に国民健康保険へ加入することを決めていても、退職日の翌日に手続きができるとも限りません。極端な話ですが退職(健康保険の退会)が金曜日で、月曜日に手続きを行う予定で、間の土日に急病になったり事故に合う可能性もゼロではありません。切り替え予定だったとはいえ、この期間は無保険、つまり保険へ加入していない時期になってしまいます。病院で診察を受けた場合は、保険診療とならず、医療費は全額自己負担です。

このようなわずかな無保険期間も作らないためにはどうしたらよいのでしょうか。

健康保険の任意継続制度の利用

ひとつ目に紹介する方法は、加入していた健康保険の任意継続制度を利用することです。任意継続の資格は退職日の翌日から2年間です。退職後もその間は無保険にはなりません。もし転職したら新しい健康保険へ入ることになります。その段階で任意継続のほうは資格が喪失されることになるので、保険が重複することもありません(資格喪失の手続きは必要です)。

国民健康保険への事前加入手続き

ふたつ目の方法は、退職が決まったら健康保険の資格が喪失する前に国民健康保険の加入手続きをすることです。自治体によって多少の差はありますが、国民健康保険への加入手続きは、健康保険の資格喪失日の2週間くらい前から受け付けています。退職日の翌日から加入できるようにあらかじめ手配しておけば無保険期間を作らずにすみます。

被保険者として家族の健康保険へ加入

3つ目の方法は少し注意が必要です。これは被扶養者として家族が入る健康保険に加入する方法です。なぜ注意が必要かというと、健康保険のほうで被扶養者になれるかどうかの確認等があるからです。退職日の翌日に被扶養者になるためには、手続きの時間に余裕をもっておく必要があります。手続きの仕方や確認方法は健康保険によって異なりますが、退職日の遅くとも1ヵ月くらい前からは準備をしておいたほうが良いでしょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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