社会人2年目までに覚えておきたい所得税と住民税の計算

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社会人になり、お金を稼ぐようになったら払う税金があります。所得税と住民税です。新卒初年度は住民税の支払いがまだないこともあり税金の全体像が掴みづらいかもしれませんが、2年目が終わるまでには、税金の基本的な計算方法やちょっとした節税のテクニックはマスターしておきたいところです。

新入社員は所得税より住民税を多く払う

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると2020年、大学卒業者の初年度平均年収は226.0万円でした。税金について多少の知識があると、年収226万円という情報から次のことを言い当てることができます。

  • この人の税金は所得税よりも住民税のほうが高額になる
  • 住民税の金額は所得税の2倍以上だ
  • 生命保険に加入したら5,000円弱は節税できる
  • iDeCoに加入したら40,000円近くは節税できる

この記事を全部読み終わるころには、なぜ年収226万円という情報からこのようなことが言えるのか、あなたもきっとわかるようになるはずです。

所得税と住民税の税率

所得税と住民税でどちらの税金がどれくらい高額になるかを知るには、税率がひとつの手がかりになります。

所得税は累進課税と言って、所得が多い人ほど税率が高くなる仕組みです。最も低いときの所得税率は5%です。課税所得金額が1,949,000円までは、この税率5%が適用されます。

一方、住民税は税率が固定されていて、所得の多い少ないが税率に影響することはありません。住民税の税率は10%です。

  • この人の税金は所得税よりも住民税のほうが高額になる
  • 住民税の金額は所得税の2倍以上だ

年収226万円と聞いてなぜ、このようなことを言い当てられたのか。種明かしをすると、所得税の税率が5%、住民税の税率が10%であることを知っていたからです。年収226万円の場合の、所得税、住民税の計算式です。

所得税=課税所得金額×5%

住民税=課税所得金額×10%(+5,000円)

「ちょっと待って!年収226万円と課税所得金額1,949,000円までの関係が分からないよ」。そんな声が聞こえてきそうです。確かにこの部分の説明は省略できません。

なぜ年収226万円だと課税所得が1,949,000円以下になるのか。これは、会社員(パート・アルバイトも同様)の年収からは、最低でも55万円を税金のかからない経費として扱えるきまりがあるからです。この経費のことを「給与所得控除」と言います。

年収226万円から給与所得控除55万円を引くと171万円になります。この時点で課税所得が194.9万円を超えることは理屈上あり得ません。つまり、年収226万円の人の所得税率は5%だと判断可能になるのです。

社会人になったばかりでもできる節税。税金はいくら安くなる?

ここまでの情報を使って節税の仕方やその効果を考えていきましょう。

所得税も住民税も税率を変えることはできませんので、節税するためには「課税所得金額」を小さくするほかありません。たとえば、課税所得金額を10万円減らしたとします。するとその節税効果は次のようになります。

所得税の節税効果:10万円×5%=5,000円

住民税の節税効果:10万円×10%=10,000円

減らした課税所得金額にそれぞれの税金の税率を掛けることで、その節税効果が簡単に計算できます。この考え方を利用したのが、このふたつの発言です。

  • 生命保険に加入したら5,000円弱は節税できる
  • iDeCoに加入したら40,000円近くは節税できる

生命保険のケースを具体的に説明しましょう。年間80,000円の保険料を支払い、一般的な生命保険に加入していたとします。それだけで、所得税の課税所得を40,000円、住民税の課税所得を28,000円減らすことができるのです。これを生命保険料控除制度と言います。課税所得が減ったときの節税効果を上の計算式に当てはめてみましょう。

所得税の節税:4万円×5%=2,000円

住民税の節税:2.8万円×10%=2,800円

合計4,800円の節税効果があるので、「生命保険に加入したら5,000円弱は節税できる」と言えるのです。

iDeCoはもっとシンプルです。年間の掛金分を全額所得税、住民税それぞれの課税所得から減らすことができます。これを小規模企業共済等掛金控除制度と言います。会社員の年間の掛金は27.6万円が上限です。上限いっぱいまで加入していた場合で節税効果を計算しましょう。

所得税の節税:27.6万円×5%=13,800円

住民税の節税:27.6万円×10%=27,600円

合計41,400円の節税効果があるので、「iDeCoに加入したら40,000円近くは節税できる」と言えるのです。

年収226万円のときの所得税と住民税

年収226万円では所得税と住民税はいくらになるのか。ここまでの内容の振り返りも兼ねて確認してみましょう。

まず、年収から経費(給与所得控除)を差し引くことができました。【226万円-55万円=171万円】です。一般に年収から経費を引いたものを所得と言います。この171万円は所得金額です。

所得金額はそのまま課税所得金額になる訳ではありません。例でも示したように課税所得金額は減らすことができるからです。課税所得金額を減らすことを所得控除と言います。計算式で表すと次のようになります。

課税所得金額=所得金額-所得控除金額

所得控除には誰もが当てはまる(課税所得を減らせる)制度もあれば、そうでないものもあります。生命保険料控除制度や小規模企業共済等掛金控除制度はそれぞれ生命保険やiDeCoなどに加入していなければ利用できませんし、控除額も支払った保険料や掛金によって変わります。

つまり、所得控除を計算に入れようとしたとたんに、一般論が通用しなくなるのです。所得控除では個人個人の事情が優先されます。

とは言え、せっかくここまで読んでもらったのに「所得税と住民税が計算できませんでした」を結論としてしまうのは、申し訳ない気持ちもあります。そこで、所得控除を必要最低限のものに絞った場合で目安となるそれぞれの税額を算出しました。

年収226万円のときの所得税と住民税の目安

所得税:35,400円

住民税:79,500円

年収から経費(給与所得控除)を引き、誰もができる課税所得を減らすための所得控除制度を利用した結果がこの金額です。個人の事情で適用される所得控除があった時や生命保険料控除制度、小規模企業共済等掛金控除制度を節税テクニックとして活用した場合は、この金額よりも税金は少なくなります。