厚生年金の保険料は給与や賞与をもらうたびに支払っているます。数ある社会保険のなかでも徴収額が一番大きいのが厚生年金です。 この記事ではその額がどうやってきまっているかを解説します。
9.15%、9.15%、9.15%を3回唱えておぼえよう
あなたが負担している厚生年金の保険料は給与や賞与の額と連動しています。だいたいの金額を知りたい、という人であれば、給与や賞与の額に9.15%をかけてみよう。
たとえば254,139円×9.15%=23,253円(端数切捨て)といった具合だ。正確な額ではないけれだいたいこんなものだ。
もう少し正確な情報を知りたければ、この先も読んでください。たとえば保険料は給与と賞与では異なる計算式が用意されています。また、ほかの社会保険と違って職種や会社、加入組合を問わず皆が同じ計算式を使うのも厚生年金の特徴です。
賞与の厚生年金保険料の計算はカンタン
あなたは年に何回賞与をもらっていますか?厚生年金では年3回以下のものを賞与とし扱うことにしています。もし年に4回以上賞与があるなら、厚生年金の計算上、それらは給与と同じ扱いになります。
さて、賞与時の厚生年金保険料を先に紹介するのは計算式が簡単だからです。
賞与は報酬の千円未満を切り捨てて、その額に×9.15%するだけです。たとえば報酬が254,149円のときの保険料を計算してみましょう。
254,000円(千円未満切り捨て)×9.15%=23,241円
あた、一度の賞与の額が150万円を超えた部分には保険料はかからないというルールもあります。どんなにたくさん賞与をもらっても1,500,000円×9.15%=137,250円が賞与1回で払う保険料の上限です。
たとえば100万円の賞与が年に2回あったら厚生年金保険料は100万円×9.15%×2回=183,000円だけど、200万円の賞与が年1回なら137,250円です。その分、手取りが増えるわけですね。
給与の厚生年金保険料の計算はグレードで考える
給与の計算は賞与より少しだけ複雑です。これは個々の給与を額に応じてカテゴリー分けし、その代表値を計算に使うからです。実際のカテゴリー分けの例を見てください。
給与額 | 代表値 |
210,000~230,000 | 220,000 |
230,000~250,000 | 240,000 |
250,000~270,000 | 260,000 |
このようなカテゴリーが全部で31あります。このカテゴリーは等級と呼ばれます。なお、代表値は日本年金機構のHPで確認できます。
給与時の厚生年金保険料は報酬が210,000の人も220,000円の人も230,000円の人も一律220,000円の代表値を使って計算されます。つまり保険料が同じになる、ということです。
再び254,149円を例にしてみます。254,149円の給与は260,000円という代表値に置き換えられます。この代表値を使った保険料の計算は以下の通りです。
260,000円×9.15%=23,790円。これが給与時にあなたが負担する厚生年金保険料です。
給与も一定額を超えると保険料がかからない仕組みになっています。令和2年9月にこの上限ラインが変更になりました。
●令和2年9月より前の上限設定
報酬月額605,000円以上/標準報酬月額620,000円/保険料620,000×9.15%=56,730円
●令和2年9月以降の上限設定
報酬月額635,000円以上/標準報酬月額650,000円/保険料650,000×9.15%=59,475円
厚生年金保険料の計算で登場する専門用語
厚生年金保険料を計算するにあたり、いくつか特徴的な言葉が出てきます。正確な保険料を計算する必要があるときは、覚えなければならない用語です。
報酬
ここまでの説明は給与や賞与の額をそのまま使ってきましたが、正確には給与も賞与も「報酬」という数値に置き換えられます。
日本年金機構のHPで報酬に含まれるものとしていくつか例があげられているので確認してみましょう。
日本年金機構ホームページより
基本給のほか、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金等、事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。
報酬に含まれないものには、退職手当、内職収入、財産収入、出張旅費、赴任旅費、見舞金、結婚祝い金、餞別金、大入袋などがあります。もし給与や賞与にこれらの項目が含まれているなら、それを除外してから計算するようにしてください。
標準賞与額
標準賞与額とは、賞与の厚生年金保険料を計算するときに使用する数値です。賞与報酬の千円未満を切り捨てたものが標準賞与額になる。
(例)賞与報酬が254,149円のときの標準賞与額は245,000円。
標準月額報酬
標準月額報酬とは、これまでの説明で「代表値」と呼んだもののことです。標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から31等級(62万円)までの31等級に分かれている。
(例)給与報酬が254,149円のときの標準月額報酬は260,000円
標準月額報酬は毎月の給料のたびに計算されるわけではありません。一般的な定時決定では、4月から6月の報酬の平均を計算し、そこで出された標準月額報酬をその年の9月から1年間適用します。4月から6月にかけて、ほかの月よりもたくさん働いて報酬が増えていると標準月額報酬がそのラインで設定されてしまうので気持ち的には少し損した気分になります。4月、5月、6月は可能な限り残業や休日出勤は控えたほうがいいでしょう。