パートだから社会保険に加入したくない。【2020年の条件は?】

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パートさんにはいろいろ事情があります。「パート先の社会保険に入りたくない」もそのひとつ。時代はパートを社会保険へ入らせようと躍起になっていてニュースでもこの話題はよく取り上げられています。実際、パートの社会保険への加入条件はここ数年で目まぐるしく変わっているんです。少し先の未来を見据えて情報を常にアップデートしておきましょう。

2020年5月、年金改正法が成立!

パートの社会保険への加入条件に密接に関わる年金改正法が2020年5月に成立しました。パートが社会保険に入るときの条件は、労働時間や給与額などパートの働き方と勤め先の規模で決まります。このうち勤め先の規模の条件が2022年10月と、2024年10月にそれぞれ変わることになります。これによって今までと同じ働き方であっても勤め先の社会保険に加入しなければならない人が増えるのは確実です。

社会保険に加入しないパートはいない?

20歳以上の人がただ「入りたくない」という理由で社会保険(医療保険と公的年金)を免除されることはありません。パートでもアルバイトでも、たとえ働いていなくても社会保険への加入は義務です。だからパートで働く人の「社会保険に入りたくない」はよく耳にする言葉だけど不正確な表現です。パートは社会保険に入らないのではなく、どの社会保険に入るかを考える人が多いのです。

たとえば、「パート先の社会保険に入りたくない」のは、配偶者の保険組合に入っていて(扶養されていて)そこから抜けたくないパートさんです。具体的には「夫(または妻)が自分の健康保険と年金を払ってくれているのでそこを出るほどには働かない」という気持ちの表れです。もし配偶者の保険から抜けてしまったら自分で社会保険に入ることになります。保険料を自分でも払うということです。これを避けたいパートさんは、パートとしての働き方を吟味しなければならない。

うっかり配偶者の被扶養者認定から外れないこと

配偶者が加入している保険組合の被扶養者から抜けたくないなら、まずはその保険組合が定める被扶養者の認定条件を確認してください。認定条件で特に有名なのは被扶養者の「年間収入が130万円未満」であることです。「130万円の壁」と呼ばれたりもします。

年間収入には交通費などの手当ても含まれるので注意してください。保険組合によってはさらに「連続する3ヵ月の平均収入月額が108,334円未満であること」や「扶養認定から引き続く12ヵ月どこをとっても130万円未満であること」といった追加の条件を設けているところもあります。「130万円未満」であれば絶対に大丈夫とはなりませんので、詳細は保険組合に確認しましょう。

うっかりパート先で社会保険の加入条件を満たさないこと

保険組合の定める被扶養者の認定条件をクリアしていさえすれば安心、とはなりません。働き方によってはパート先の社会保険に入らなければならないことになるんです。収入条件はこちらのほうが低い金額に設定されているので注意が必要です。パート先で社会保険に入る条件を満たしてしまったら「私はダンナのほうの保険に入っているんで(入らなくて)いいですー」は通用しません。配偶者の被扶養者から抜けたくないなら、パート先で社会保険に入らない条件を確認することがとても重要です。これには労働時間や給与額だけでなく勤め先の規模も関係してきます。

勤め先が会社または地方公共団体に属する場合

パートでも1週間の所定労働時間が一般社員の3/4以上で、1ヵ月の所定労働日数が一般社員の3/4以上あると、すぐに社会保険への加入が決まります。そもそもこの条件で働いたら「年間収入が130万円未満」の壁も簡単に突破してしまうでしょう。

これよりも労働時間が短いパートさんでも、次の条件をすべて満たすと社会保険に入ることになります。勤め先の従業員数が501人以上かそれ以下で労働時間に違いがある点に気を付けて確認してください。

勤め先の従業員数が501人以上

  • 週所定労働時間が20時間以上ある。
  • 月額賃金8.8万円以上ある。
  • 1年以上の使用見込みがある。
  • 学生等でない。

勤め先の従業員数が500人以下

  • 週所定労働時間が30時間以上ある。
  • 月額賃金8.8万円以上ある。
  • 1年以上の使用見込みがある。
  • 学生等でない。

なお、勤め先の従業員数が500人以下でも労使合意があるところでは週所定労働時間が20時間以上で社会保険への加入が必要になります。これは勤め先に聞いて確認してみましょう。

勤め先が個人事業所の場合

会社以外にも働く場所はあります。個人事務所や自営業のお店です。たとえば弁護士事務所や税理士事務所などの士業です。ほかにも個人経営の飲食店や美容院などの接客サービス業、農業や畜産業なども個人でやっているところは多いです。

会社と区別するためにこうした勤め先は「個人事業所」と呼ぶことにします。個人事務所でも以下に該当する職場では会社(勤め先の従業員数が500人以下の場合)と同じく4つの条件(週所定労働時間が30時間以上ある。/月額賃金8.8万円以上ある。/1年以上の使用見込みがある。/学生等でない)を満たすと社会保険への加入が義務になります。

勤め先の従業員数が常時5人いる次の業種の個人事業所

  1. 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
  2. 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
  3. 鉱物の採掘又は採取の事業
  4. 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
  5. 貨物又は旅客の運送の事業
  6. 貨物積卸しの事業
  7. 焼却、清掃又はとさつの事業
  8. 物の販売又は配給の事業
  9. 金融又は保険の事業
  10. 物の保管又は賃貸の事業
  11. 媒介周旋の事業
  12. 集金、案内又は広告の事業
  13. 教育、研究又は調査の事業
  14. 疾病の治療、助産その他医療の事業
  15. 通信又は報道の事業
  16. 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

反対に社会保険がない可能性がある職場は、上の業種で従業員数が常時5人未満の個人事業所、もしくは上の業種に当てはまらない個人事業所(従業員数は問われない)です。

2022年、2024年の制度変更に要注意!

もし、あなたが従業員500人以下の勤め先で働いていて、週所定労働時間が20時間以上あるけれども社会保険に加入していない、という状況にあるなら今後数年間は制度が変わっていくので特に注意が必要です。勤め先の社会保険に加入するか、勤務時間を20時間未満にするか、職場を変えるか、いくつかの選択を迫られることになります。

2020年に成立した年金改正法では、厚生年金の適用基準の境目となっている従業員数が2024年にかけて段階的に減少していきます。従業員数の制限を緩くし、よりたくさんの人に厚生年金に入ってもらおうという目算が政府・厚生労働省にあるからです。

時期対象企業の従業員数の基準
現在~2022年9月501人以上
2022年10月~2024年9月101人以上
2024年10月~51人以上

対象企業の従業員数が101人以上になると45万人、51人以上になると65万人が厚生年金に新たに加入することになる、という試算を厚生労働省は行っています。自分がこの中に含まれるのかどうか、確認が必要です。

失業したときの心強い味方「雇用保険」

社会保険を広い意味でとらえると雇用保険と労災保険も入ります。パート先の社会保険に入りたくない人はこのふたつをどう考えればいいのでしょうか。

まずは雇用保険から説明します。雇用保険には扶養という考え方はありません。だから被扶養者から外れるという懸念は(そもそも入れていないので)不要です。シンプルに雇用保険に入るメリットとデメリットだけを考えればいいでしょう。メリットは失業したときにお金がもらえたり育休の取得ができたる点です。とくに失業給付は大きなメリットです。デメリットは毎月保険料の負担があることです。保険料は収入の0.3%になる人が大多数です。収入が15万円であれば450円が毎月の給料から差し引かれます。保険料負担もそれほど高くはないので、メリットデメリットを天秤にかけたら加入しておきたい、と思う人が多いのではないでしょうか。

パートが雇用保険に入るのは31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上働いている場合です。狭義の社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)の加入条件に比べて緩やかなので、雇用保険だけ入るということも可能です。

雇い主が全額負担で保障も充実「労災保険」

労災保険も配偶者の保険組合から扶養されるものではないので、パート先で加入しても問題はありません。労災保険は雇用保険よりさらに加入条件が緩やかです。パートとして勤めるならほぼ無条件で加入できます。

労災保険の保険料は全額事業者が負担するので、給料から天引きされることはありません。入っていることを忘れてしまいそうですが、仕事中や通勤途中に事故・ケガに備える大切な保険です。雇い主には契約期間や労働時間にかかわらず原則すべての被雇用者を労災保険に加入させなければならない義務があります。

この例外は、5人未満の従業員を使用する個人事業の農林水産です。この条件に該当する職場でパートをしている人は労災保険の加入の有無を確認しておきましょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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