バイトでそこそこ稼ぐようになると、待ちかまえているのが源泉徴収。給料から税金が勝手に引かれてしまう悲しい仕組みだ。いったい毎月の給料がいくらからこの源泉徴収は行われることになるのだろうか。源泉徴収される、されないのラインはどこで引かれているのだろう。
源泉徴収って何?天引きとは違うの?
源泉徴収とは、働いてお金を稼いだ人の給与から引かれる税金のことだ。働いて稼いだお金は所得と呼ばれる。この所得があると、避けられないのが所得税だ。アルバイトでもパートでも正社員でもそこは変わらない。
しかし、同じアルバイトでも所得税が源泉徴収される人もいれば、されない人もいる。キミ自身、今月はなくても、来月はあるかもしれない。この記事では、なぜそう言ったことが起こるのかを解説していくよ。
その前に、この手の話でいつもややこしくなる言葉の整理をしておこう。源泉徴収と似たように使われる「天引き」という言葉を知っているだろうか。天引きは、働いてお金を稼いだ人の給与から引かれるすべてのお金のことだ。天引きされるものには所得税と住民税、社会保険(健康保険や年金、雇用保険など)などがある。源泉徴収は給与から引かれる所得税のことなので、天引きの一部が源泉徴収というわけだ。
大きさで表すと「天引き>源泉徴収」という図式になる。まずこの違いを覚えておこう。
源泉徴収は所得税の先払い?
では、ここからは源泉徴収とは何か、を見ていこう。源泉徴収は、働いてお金を稼いだ人の給与から引かれる所得税のことと説明したけど、より具体的な例をあげてみよう。
Aさんはとあるレストランでアルバイトをしている。1月はいつもより多めにシフトを入れた。時給換算すると1,000円×150時間で150,000円。この分の給与は2月になってから振り込まれる。
2月になった。銀行に振り込み額を確認しに行くAさん。この時、振込額が150,000円よりも少ないことに気が付く。これは所得税額分が源泉徴収されているからだ。稼いだ月の給料をもらうときに、その給料に応じた所得税額が同タイミングで引かれている(源泉徴収されている)点は、意外と大事なポイントなので覚えておこう。
所得税はどうやって決まる?
ここで、所得税を少し解説していこう。所得税は1年間の所得に対して課される税金だ。1月1日から12月31日までの1年の間のトータルの所得に対して、その年の所得税額が決まる。
先ほどのAさんのケースを思い出してほしい。Aさんは1月に15万円相当の働きをして、その金額に応じた所得税が源泉徴収という形で差し引かれた。差し引かれた分は会社経由で速やかに納税される。ところで、所得税というのは、1年間の稼ぎが少ない場合、税金がかからない、という特徴がある。アルバイトなら年に103万円以下の稼ぎだと所得税がかからない。もし、Aさんが1月でバイトを辞めて、その後の11ヵ月間はまったく働かなかったとしよう。年収は最初の15万円だけ。所得税は支払う必要はないよね。
でも、おかしい…。Aさんは2月の給料時点ですでに源泉徴収されていたよね。会社経由ではあるけれど2月に納税が済んでいるんだ。本当は払う必要ないのに…。
Aさんがこの後どうなったのか。それは少し先で触れるとしよう。今、頭に入れておきたいのは、所得税は1年間の所得合計が分かってようやく確定するので、その年が終わらなければ正確な所得税額は分からないということだ。
毎月の給与のたびに所得税が差し引かれるこの源泉徴収という仕組み。いわば所得税の先払いなんだ。
では、毎月の給与がいくらからこの源泉徴収は行われるのだろうか。
アルバイトの源泉徴収がある人、ない人
話しをシンプルにするため、まずはバイト先がひとつのケースで考えてみる(掛け持ちの場合については後述)。
すべてのアルバイトが毎月の給与から源泉徴収されるかというと、そうとは限らない。源泉徴収があるかどうかは、その人が1ヵ月でどれくらい稼いだかによる。
アルバイトとして源泉徴収されるのは、月の社会保険料等控除後の給与等の金額が88,000円以上になってからだ。
これは、分かりづらいね…。月の社会保険料等控除後の給与等の金額って何だ?となるのが普通だ。厳密に回答を求めるとかえって話がややこしくなる。「源泉徴収は毎月の給与がいくらから?」という問いには、(社会保険に入っていない場合で)88,000円以上からと考えて差し支えないだろう。
つまり月によって稼ぎが90,000円だったり、60,000円だったり、時に100,000万円だったりと、この付近の額で給与が上下している人は、月によって源泉徴収があったりなかったりすることになる。この仕組みに慣れてくると、今月はいつもより多く働いたので、所得税が源泉徴収されてしまった、という感想を持つことになるだろう。
掛け持ちでバイトをしている
では、掛け持ちでバイトをしているとどうなるのだろうか。バイトを掛け持ちするときは、必ずメインのバイトとそうでないバイトを決めて、バイト先に申告しなければならない。
メインのバイト先は、ひとつのバイトしかしていないケースと同じ仕組みだ。源泉徴収されるかどうかのボーダーラインとして、88,000円が存在する。
一方、サブのバイトはというと、こちらは月にいくら稼いだかどうかは関係なく、必ず源泉徴収される。1万円でも2万円でも、もちろん10万円でも。さらに、言うとサブのバイトのほうが源泉徴収される金額は大きくなる。これは先払いしている所得税が大きくなっている、ということだ。 掛け持ちバイトの人は、 この後で説明する所得税の取り戻し方もよく読んでほしい。
先払いで払い過ぎた税金を取り戻せ!
源泉徴収とアルバイトのことを説明してきた。ここからは単に仕組みの説明ではなく、具体的にお財布を潤すための方法についてだ。
源泉徴収は所得税の先払いだったよね。正確な所得税は1年間の所得合計が分かってから確定するので、源泉徴収の合計額と差額が出ることはよくあることだ。また、年収ベースでは所得税の課税対象にはならない人が、たまたま稼ぎの多かった月に源泉徴収によって所得税を払っていることも考えられる。
先払いした源泉徴収と正確な所得税額を精査し、払いすぎている所得税を取り戻す方法を紹介しよう。
年末調整で取り戻す
バイト先がひとつのケースでは、年末調整で所得税を取り戻す。作業としては、毎年11月ごろに会社から年末調整に必要な用紙が配られるので、それに記入して提出するだけだ。年末調整できる項目が多ければ多いほど戻ってくる所得税は増える。もしがっつり戻したい人、戻せる可能性がある人は、別に年末調整について調べて欲しい。生命保険料くらいしかない、生命保険にも加入していない、という人でも所得税が戻ってくる可能性はあるので、必ず年末調整の用紙は提出しよう。
確定申告で取り戻す
バイトの掛け持ちをしている人は、必ず確定申告をしなければならないし、確定申告をすれば所得税はほぼ戻ってくるだろう。年末調整に比べると格段に難しい印象の確定申告だが、記入することは実はそれほど多くはない。今はインターネット上で手順通りに進めていけばかなりスムーズに作業を終えられるので、臆することなく取り組もう。