パートで月収20万円の労働をした場合、支給される手取り額はおよそ16万円になります。額面と手取り額で差があるのは、社会保険料や税金を会社が天引きしているからです。
社会保険と税金
月収20万の働きに対して天引きの対象となる項目には何があるのでしょうか。毎月継続的に月20万円を稼ぐパートは、職場を通して社会保険に加入しているはずです。その前提で天引き項目とその金額をシミュレーションしてみましょう。
社会保険にかかるお金
社会保険料として天引きされるのは、次の3項目です。額面が月20万のときの天引き額も併記します。
- 厚生年金保険料:18,300円
- 健康保険料:10,000円
- 雇用保険料:1,200円
厚生年金保険料は保険料率が18.3%(本人負担は9.15%)で固定されています。給与が上下したり、職場や職種が違ってもこの率が変わることはありません。健康保険料は協会けんぽ(東京都)の令和5年4月納付分以降の料金で計算しています。そのため職場や職種、居住地域によって多少の差が生じます。雇用保険料は職種によって変わります。上は農林水産・清酒製造事業、建設事業に該当しない一般の事業で計算したものです。
税金にかかるお金
税金として天引きされるのは、所得税と住民税です。額面が月20万のときの天引き額を確認してみましょう。
- 所得税:4,770円
- 住民税:7,250円
所得税は扶養親族がいる場合はその人数によって源泉徴収額が少なくなります。ここでは扶養親族がないものとして計算しています。住民税は前年に同じ稼ぎがあったものとして算出しました。パートを始めた最初の年の住民税は翌年6月から天引きになりますので、それまでは住民税の天引きはないので、手取り額は増えることになります(時期が後ろにずれているだけで、納税することに変わりはありません)。
今回のシミュレーションでは、月収20万円のパートの手取り額はおよそ15.8万円になりました。社会保険料と税金。それぞれがどれくらいの金額かかっているのかもイメージできたと思います。仕事および家庭の状況などシミュレーション状況によって金額は変わりますが、目安として覚えておくと良いでしょう。
20万を稼ぐための目安労働時間
月20万の額面を稼ぐために必要なパート時間を確認しておきましょう。
時給 | 月最低労働時間 |
800円 | 250時間 |
850円 | 236時間 |
900円 | 223時間 |
950円 | 211時間 |
1000円 | 200時間 |
1050円 | 191時間 |
1100円 | 182時間 |
1150円 | 174時間 |
1200円 | 167時間 |
労働基準法上の上限は「週40時間、1日8時間」です。この時間を超えた労働は時間外労働になりますので、手当が支給されます。これはパートでも正社員でも同じことです。また、1日6時間以上(かつ8時間以内)働く場合は、少なくとも45分間の休憩をが必要になります。
地域別最低賃金
パート探しで参考になる最低賃金ですが、パート後も情報はアップデートされていることがあるかもしれません。自分の時給と比べてみてください。
令和4年度地域別最低賃金改定状況(厚生労働省)
パートと「働き方改革」
2020年4月1日に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました(中小企業は2021年4月1日から)。働き方改革の目的のひとつ、非正規と正社員の格差是正を実現するための具体的な法律です。
パートとして働くときに覚えておきたい要点は次のふたつです。
・ 不合理な待遇差が禁止されている
給与はもちろん、賞与や手当の有無など、非正規だから正規だからという理由で待遇差をつけることが禁止されています。
・ 待遇に関する説明を受けることができる
パートが正社員との間に待遇差があると感じた場合、パートは会社にその理由について説明を求めることができますし、会社はそれに応じなければなりません。待遇差がある場合はそこに合理的な理由が必要になります。また、説明を求めたパートに対して、その後不利益が生じることがないようにすることも定められています。
今後、様々なところで「パートタイム・有期雇用労働法」をめぐる具体的な事例や判例などが出てくるはずです。少しでもおかしいところがあると感じたら、他のケースを参考にするなどして、パートとして正当な待遇を主張できるように心がけるようにしましょう。