1年目でもよく分かる。新社会人向け。社会保険の必読ルール

この記事は約7分で読めます。

社会人になり色々と学ぶことはありますが、社会保険もその一つに数えられます。社会人1年生であっても保険を利用する機会はあるでしょうし、保険料の納付もさっそく始まります。

1年目から頼りになる!社会保険加入のメリットは?

社会保険に入っていることで、どんなメリットがあるのか。いくつか書き出してみましょう。

  • 病気になったときの診察代や薬局での薬代が本来の費用の3割負担ですむ。
  • 仕事中にケガをしたときの治療代は、一切負担しなくてもいい。
  • 会社が倒産したらすぐに失業保険が支給される。
  • 妊娠しても会社に在職でき、出産費用やその後の生活費が支給される。

1年目からかかわる機会がありそうなことだけでもこれくらいはあります。

社会人が加入する社会保険とは?

社会人、ここでは企業などの法人で働く人とします。非正規社員でも正社員同様に週5日勤務している人も対象です。

実は社会人になる前にも、みなさんは社会保険には加入していました。医療保険であれば親の健康保険の被扶養者として、年金保険の場合は国民健康保険への加入などによってです。

社会人になってまず変わるのは、自分自身が被保険者になるという点です。国民健康保険のように加入や納税の手続きを自分でするのではなく、会社を通して様々な手続きをする点も大きな変更点のひとつです。さらに、加入する保険も増えます。労働保険と呼ばれる「雇用保険」や「労災保険」が加わるのです。

社会人1年目から加入する社会保険をピックアップしてみましょう。

健康保険

会社で働く人が入る医療保険です。会社によって入る健康保険が決まっています。その会社単独の健康保険もあれば、業界の会社が集まる健康保険もあります。中小企業が都道府県単位で集まる「協会けんぽ」もあります。

厚生年金保険

同じ年金保険でも国民年金保険とはまったく異なる性質があります。ひとつは保険料を会社が半分払ってくれること。もうひとつは、保険給付の額が増えることです。社会人生活が始まったばかりなので年金をもらえるのはだいぶ先のことですが、国民年金保険との差はかなりあります。また若年者であっても障害者となったときの保険給付は年金保険が行います。この場合も、国民年金保険と厚生年金とでは給付内容に差がつきます。もちろん、厚生年金の給付のほうが手厚くなっています。

雇用保険

会社で雇用されている人が加入できる社会保険です。万が一会社が倒産した場合や自己都合で退職した場合に給付金が出ます。いわゆる失業保険です。そのほか、子どもを養育するための育児休業給付も雇用保険が行います。

労災保険

会社で働くときに特に重要な社会保険です。仕事中や通勤途中にケガをしたり、仕事が原因で病気になった場合などの治療費は労災保険が全額給付します。仕事を休み給料がもらえなくなったときは労災保険からの給付があります。障害が残った場合、介護が必要になった場合などに備える給付もあります。なお、労災保険の保険料はすべて会社が負担します。労働者が払う保険料はありません。

社会保険があれば、民間の保険はいらない?

社会人1年目から加入する社会保険にどんなものがあるか。おおまかに説明しましたが、イメージはついたでしょうか。

会社を通じて入る社会保険ですが、会社がその中身をきちんと説明してくれることは稀です。新社会人は社会保険を詳しく知る機会もないうちに加入することになるので、保険がどんなことに備えるのかや、具体的なメリットが分からないまま、中堅、ベテラン社員になってしまうことも当たり前のようにあります。それでいて、民間の保険の勧誘を受けたりすると、将来に備えて加入しなければ、などと思ってしまうのです。

たとえば健康保険には高額療養費医療制度というものがあります。月額の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超過額はあとで返金されるというものです。保険給付に該当する医療費であれば、その費用は無限にかかるわけではないのです。

一部の組合が独自に行っている付加給付制度(「一部負担金払戻金」「療養費付加金」という呼称もあります)は高額療養費よりもさらに低いラインで月額の医療費の上限が設定されています。

社会保険という立派な土台があるのに、果たして民間の医療保険に追加で入る必要があるのかどうか。民間保険を選ぶときは社会保険をベースにして、その不足分をカバーするという考えを基本に考えることが大切です。

民間にはどんな保険がある?

社会保険の足りない部分をカバーする役割を担う民間保険。どのような保険があるのでしょうか。社会人になったらすぐに入らなければならない保険は少ないかもしれませんが、知っておいて損はありません。代表的な民間の保険を紹介します。

生命保険

死亡または高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる保険です。遺族の生活保障を目的とした保険です。

医療保険

民間の医療保険は、入院・手術など医療費が高額になりやすい治療に備えて加入する保険です。公的医療保険の補てんをする役割があります。

がん保険

がんを対象として保障する保険です。先進治療など公的医療保険の対象とならない一部の治療費を保障します。また、医療保険と違い、入院給付金の支払限度日数に制限がありません。

個人年金保険

契約時に定めた年齢(60歳、65歳など)から、一定期間もしくは生涯にわたって毎年、一定額の年金が受け取れる保険です。国民年金や厚生年金などの公的年金を補てんする役割があります。

学資保険

子どもの入学時や進学時に祝金や満期保険金を受け取ることができる教育資金を準備するための保険です。契約者である親が亡くなると、それ以降の保険料の支払いが免除され、祝金や満期保険金を受け取れます。

介護保険

所定の介護状態になった場合に、介護一時金や介護年金などを受け取ることができます。公的介護保険を補う役割があります。

就業不能保険

病気やケガで働けない状態に陥ったときに、「働けない間の収入減少」といったリスクに対して備える保険です。また、医療保険の補てんをする役割もあります。

社会保険に入るために必要な手続き

社会保険は会社を通じて加入するため、手続きも会社経由で行うことになります。転職者の場合は、これまでの社会保険からの変更が発生するためその分やることも多くなりますが、新社会人の場合は比較的容易です。

社会保険に関連して提出する書類は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」だけです。扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者 資格取得等届」の提出も必要になります。あとは「マイナンバー」「年金手帳」も社会保険加入にあたり提出が必要になることがありますので用意しておきましょう。

20歳を超えていてすでに国民年金に加入している人もいると思いますが、国民年金脱退の手続き等は必要ありません。会社で厚生年金保険に入っていることが分かれば、自動的に国民年金のほうは退会となります。ただし、健康保険については脱退手続きが必要です。国民健康保険の場合は市区町村の担当に、両親の社会保険の被扶養者となっていた場合は両親のほうで被扶養者の異動を申告することになります。

保険料の計算と徴収の仕組み

社会保険にはそれぞれ保険料の計算方法が決まっています。当然、保険料にも多い少ないがあります。

新社会人として最低限理解しておきたいポイントは保険料の決まり方と、その保険料が労働者と事業者でそれぞれ負担されているという点です。具体的に確認していきましょう。

健康保険と厚生年金は報酬に対する保険料率で保険料が決まります。報酬には基本給のほか、家族手当、住宅手当、通勤手当、役付手当、残業手当なども含まれます。給与明細の総支給額が報酬と同じという人が多いです。

雇用保険と労災保険は賃金総額に対する保険料率が保険料です。言葉は違いますが、報酬同様に総支給額が賃金総額となると考えても、ほぼ問題はないでしょう。

健康保険と厚生年金では報酬は毎月計算するのではなく、4月から6月の平均値をもとに代表値を決め(標準報酬月額と言います)、それを保険料率に掛けます。そのため、基本的には1年間(原則9月から翌年8月)は同じ保険料を支払うことになります。新卒の場合は、4月から8月までの間に限り、4月の報酬実績をもとに標準報酬月額が決まります。

雇用保険、労災保険は賃金総額をもとに毎月計算されます。労災保険は労働者負担はゼロなので、あまり気にする機会はないかもしれません。

いずれの保険も賞与をもらったときも支払いの対象になります。

社会保険の種類課税対象保険料率の目安労働者の負担割合
健康保険報酬10%50%
厚生年金保険報酬18.3%50%
雇用保険賃金総額0.9%33.3%
労災保険賃金総額0.3%0%

労働者が払う保険料の徴収は給与からの天引きです。新社会人でも初任給から天引きがあります。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

タイトルとURLをコピーしました