厚生年金保険とは。“戻ってこない”が厚生年金保険の「きほん」

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このページでは厚生年金保険の基本を学びます。

このページで想定する読者は会社員(契約社員やアルバイトも含む)や公務員として常時雇用され報酬を得ている人です。また勤め先のことを総称として「会社」と表現しています。

もっとも負担の重い社会保険。その金額は?

厚生年金保険料は給与から天引きされています。月の給料 (以下「報酬」)のおよそ 9%が厚生年金保険料の天引き額の目安です。報酬が20万円なら厚生年金保険料は1.8万円、30万円なら2.7万円くらいです。

ほかの社会保険と天引き額を比べてみましょう。健康保険料は報酬の約5%、雇用保険料は約0.3%、労災保険料にいたっては天引き額はありません。社会保険のなかでもっとも負担しなければならないのが厚生年金保険です。

天引き額に目が奪われがちだけど、社会保険には「保険料の一定割合を会社が負担する」という点も忘れてはいけません。厚生年金保険であれば保険料の総額は、あなたの給料から天引きされている額とそれと同額か少し多めに会社も保険料を負担しています。

日本の年金は「戻ってこない」方式

日本の年金は賦課(ふか)方式という仕組みを採用しています。賦課方式は説明される機会が少ないですが、仕組みとしてはとても重要です。様々なところで議論される日本の年金問題をスムーズに読み解くカギにもなります。詳しく見ていきましょう。

まず年金を管理する立場になって、年金の収入と支出を考えてみましょう。収入は年金保険料です。年金保険料を支払うのはおおむね20歳から60歳の人たちで「現役世代」という呼ばれ方をします。一方、支出は年金の支給です。年金を支給される(受給する)のは原則65歳以上の人たちです。

賦課方式の場合、現役世代が払った年金保険料が65歳以上の年金受給者へとわたります。現役世代からのこんな発言を聞いたことはありませんか?「このままでは将来払った年金が戻ってこないのではないか」。

でも、賦課方式ではそもそも現役世代の払った年金保険料は受給者のもとへ行きます。数十年後に自分のもとへ「戻ってくる」という考え方自体がそもそもそぐわないのです。「自分の払った年金が戻ってこない」と発言する人は年金を銀行の積み立て定期預金のようにイメージしているのかもしれませんが、それは間違いです。

日本の年金は「戻ってこない」賦課方式を採用していることを覚えておきましょう。

厚生年金でもらえる3タイプのおカネ

将来、特にまだ若い現役世代が、どれくらいの年金がもらえるようになっているかは分かりません。唯一ヒントにできることがあるとすれば、今はどうなっているかです。現在、厚生年金で老後の給付には次の3つの種類があります。

老齢厚生年金保険料を払った額に応じてもらえる給付額が決まる仕組み。会社が払う保険料も給付額に反映されます。一般に年金でもらえるお金の大半はこの老齢厚生年金です。現役時代に稼いだ人ほど、老後の安心度も高まります。
老齢基礎年金(自分のもの)国民年金と同じものと捉えていいでしょう。 あなたが支払っている厚生年金保険料には国民年金保険料の分も含まれています。給付額は一律で決まっています。どれだけ稼いだかは関係ありません。就職前や離職期間中に未納分があるとその分は減らされます。
老齢基礎年金(主に配偶者のもの)厚生年金保険料には配偶者の国民年金保険料分も含まれています。給付額は一律で決まっています。

何歳からお金をもらえるのか。その時もらえる額はいくらになっているか。これも重要な点です。参考までに2019年現在の情報をお伝えします。受給の権利が発生は原則65歳からです。もらえる金額は「老齢厚生年金」と「基礎年金」をあわせた平均月額で14.7万円です。配偶者がもらえる老齢基礎年金については未納期間がなく満額支給された場合で月額6.4万円になっています。

少なくとも厚生年金保険料を払うことで 「年金を受け取る権利」は 得ています。将来その権利を行使するとき、条件がどうなっているかは、誰にも分かりません。

障害時・遺族のための厚生年金保険。

最後に厚生年金保険には老後にもらえるお金以外にも給付があります。

障害厚生年金病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代も含めて受け取ることができるお金。
遺族厚生年金厚生年金保険料を支払っていた人が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができるお金。

老後にもらえるお金はまだ先のことでも、障害厚生年金、遺族厚生年金については突然の利用があるかもしれません。問い合わせ窓口は日本年金機構です。電話での問い合わせもできますし、全国に300以上ある年金事務所のなかから最寄りの事務所へ直接話を聞きに行くことも可能です。詳細は日本年金機構のホームページで確認してください。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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