20代で積立保険は必要ない?コツコツ貯める保険商品のメリット・デメリット

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積立には「コツコツ真面目に」というイメージがある。では、20代で、保険という金融商品を使って積立を行うのは、どんな人に向いているのだろうか。他の金融商品との比較や、メリット、デメリットを考えてみよう。

積立と掛け捨ての違い

保険にはいろいろな種類があるが、基本は積立か掛け捨てかだ。この2つの型を理解していれば、積立と掛け捨てのハイブリットのような保険を見かけても恐れることはない。

掛け捨てから説明しよう。掛け捨て型の保険は、「そうなる可能性は高くないけれど、もしそうなってしまったときに金銭的な負担が大変なのでその備えをしておこう」という考えから加入するものだ。

分かりやすいのは火災保険。家を借りたときにその契約期間にあわせて火災保険に加入する。火事にならなければ保険を利用する必要はない。この場合、最初に払った保険料は戻ってこない。保険は掛けたけど使用しなかったので投げ捨てられた形だ。

一方の積立型では何に備えるかというと、将来必要になるお金だ。保険料をコツコツと積立ていき、必要なときに払戻す。それが積立型の保険だ。子どもが大きくなったときの教育費用に備える保険や、老後の生活費に備える保険などは積立型で行われる。

保険は目的で選ぶ。手段の比較は要注意!

あってほしくないことが起きたときのために備える保険と、お金をコツコツ貯めるための保険。同じ保険でもまったく意味合いが違うよね。

保険に入るときは、どちらの目的で入ろうとしているのかを明確にすることが第一だ。積立と掛け捨ては目的が違う。そのため保険料の支払い方や金額も変わってくる。積立は保険料が高く、掛け捨ては保険料が安いと比較されることがあるけれど、目的が違うのに、その手段を比較することはあまり意味がない。

積立保険は、お金を貯めることが目的にしている人が選ぶ保険だ。

積立の仕組み

ここからは積立型の保険の仕組みについて説明していこう。積立型の保険ではお金をコツコツ貯めていくわけだが、いつそれが終わるのかは商品によって違いがある。10年、15年のように期間設定がされているものや、60歳、65歳までの一定年齢を期限としているものもある。期間や期限になると、満期返戻金として払い込んだ保険料以上の金額になって戻ってくるのが普通だ。

保険料の払込期間に終わりを設定せずいつまでも貯め続けられる商品もある。期限がないものは解約という形をとってお金を払い戻すので解約返戻金という。この場合、返戻率が100%を超える時期があらかじめ設定されていて、それよりも長い期間、保険料を払う計画を立てることになる。もし、その時期よりも早いタイミングで解約すると払い込んだ保険料よりも解約返戻金が少なくなってしまう。

他の金融商品と比べてみる

積立型の保険の仕組みを整理していると、銀行の定期預金と似た部分を感じるのではないだろうか。確かにそうだと思う。違いを比べてみよう。

銀行の定期預金と積立型の保険の比較

銀行の定期預金の特徴は、積立型の保険と比較すると次の点があげられる。

  • 途中解約しても元本割れしない 。
  • リターンが少ない 。

銀行への預金は元本割れしないので、途中解約に対する安心感がある。ただし、そうしたリスクを負わない分、無事に満期まで預けたとしても得られるリターン(利息)は少ない。

積立型の保険は満期前解約(払込期間の設定がない商品では早期の解約)をすると、払った保険料よりも返戻金が少なくなる。いわゆる元本割れの状態だ。払込期間が長くなればなるほど解約しなければならないリスクは高くなる。ただし、そうしたリスクを負う分、満期になったときは銀行の定期預金よりは高いリターンを得ることができる。

商品特性にもよるので一概には言えないが、銀行の定期預金は100万円を10年間貯金しても利息は数百円~数千円程度だが、積立型保険で100万円分の保険料を10年間かけて支払うとリターン(預金における利息に該当するもの)は2万円から5万円くらいは期待できる。

債券と積立型保険の比較

積立保険との比較としてもうひとつ、債券をあげてみよう。債券とは再建の発行者(国や企業など)が投資家からお金を借りる際に発行する借用証書のようなものだ。満期になると償還といって元々設定されている額面で買い戻してもらえる。所有期間中は利息の支払いがあるので、そこで利益を得る仕組みだ。

債券の特徴を積立型保険と比較してみよう。

  • 途中で売却すると元本割れの可能性がある。
  • 発行者が倒産すると1円も戻ってこない可能性がある。
  • リターンが大きい 。

商品を満期前に手放すことによる元本割れの可能性は積立保険と同様だ。債券の場合、発行者の倒産リスクもある。保険会社にも倒産リスクはあるのだが、保険契約者は保険契約者保護機構によって大部分が補償されるため圧倒的に安心感がある。

たとえば最新のソフトバンクグループの社債は7年間の償還期間で利率は1.38%だ。100万円分の社債を購入したら7年間で利息が96,600円になる。積立型保険で100万円分の保険料を10年間かけて支払ったときのリターンの目安が2万円から5万円くらいだから、リターンの差は大きい。

保険商品ならではの特徴

銀行預金や債券と比較することで、同じお金を増やす手段のなかで積立型の保険の立ち位置がどのあたりのあるのかイメージできてきただろうか。表にまとめてみよう。

商品元本割れリスクの低さリターンの大きさ
定期預金×
債券(社債)
積立型保険

積立型保険は長期間お金をコツコツ貯め、途中解約リスクもあるのにリターンが少ないと感じた人もいるかもしれない。それは、積立型保険は保険と名がつくだけあって、いざというときの備えにもなっているからだ。 この点は他の金融商品にはない大きな特徴だ。

たとえば、満期10年の積立型保険に加入して、保険料払い込み期間中に死亡・高度障害になったときなどに、払込済みの保険料よりもはるかに高額な保険金が支払われる商品は珍しくない。家族がいる場合はこうした備えがあると非常に助かるだろう。積立型保険の満期時のリターンが低いのは、こうした補償にもリターンが振り分けられているからだ。この補償をメリットと捉えるか、貯蓄効率を悪くするデメリットと捉えるかは人それぞれだ。

20代で保険の積立を始めるメリット

では、20代で積立型の保険を始めるメリットを考えてみよう。たとえば45歳までに300万円を貯めることを目的とした場合、20代の早い段階から保険料を払い始めるのと、30代後半になってから払うのとでは1回あたりの保険料の負担に相当の差がでる。

また、定期預金や債券はそもそもの原資がなければ投資すること自体が難しいが、保険の積立であれば、まだ所得が少ない20代からも始めやすい点が大きなメリットだ。

20代で保険の積立を始めるデメリット

生活が安定している分にはいいが、将来設計も不安定な20代。結婚したり、家を買ったり、親の介護が必要になったりと、いつ、どれくらいのお金が必要になるか想定しきれないことも多い。急にお金が必要になり、積立型の保険を満期前に途中解約してしまうと払い込み済みの保険料を下回るお金しか戻ってこないので、大きく損をしたことになる。銀行の定期預金であればこうしたリスクは避けられる。

また、今は金利が歴史的にもかなり低い時代だ。今の金利で返戻率で20年先のことを約束するのは正しい選択だろうか。金利が上がったときに、償還期間の短い社債を短期で回せば、今、積立型を契約して得られるリターンをあっという間に超えることも十分考えられる話だ。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。