何歳になっても始められる、社会保険の独学勉強法

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税理士やFPになる予定はない。役所で働いてもいない。何事もプロにはプロの、そうでない人にはそうでない人の勉強法があります。経験や年齢に左右されずに、社会保険の基礎を勉強していきましょう。

このページで想定する読者は会社員(契約社員やアルバイトも含む)や公務員として常時雇用され報酬を得ている人です。総称として「会社員等」「会社」と表現します。

社会保険と民間保険の決定的な違い

ふつうの保険ではありえない「社会保険ならでは」の特徴として思い浮かべることは何でしょうか?

「保険料を断りなく徴収すること。」

正解です!

「保険料を会社も一緒に負担してくれていること。」

これも正解です!

保険料を断りなく徴収できるのは社会保険が私たちの「義務」だからです。一方、民間保険の場合、加入するしないは「任意」です。保険料を自分で決められないのも社会保険ならではです。民間の保険のように保障内容と保険料のバランスを考えて自分にあったプランを決める、ということはできません。とにかく社会保険は保険料も保障内容も決められていて融通がきかないんです。

社会保険の保険料

次は保険料に関することから、社会保険を眺めてみましょう。

保険料とは保険の加入に際して払うお金のことです。保険からもらうお金は保険金または給付金と呼びます。きちんと保険料を払っているから何かあったときに保険がカバーしてくれる、民間保険も含め、保険の基本的な仕組みです。

さて、社会保険は全部で5つあります。それぞれに払わなければならない保険料は保険ごとに決まっています。共通しているのはあなたが稼いだ給料(以後「報酬」と呼ぶよ)に対して何%という決め方をしている点です。これを保険料率と言います。各社会保険の保険料率はこちらです。

社会保険名称保険料率
健康保険めやす10%
労災保険平均4.5%
雇用保険9%・11%・12%のいずれか
厚生年金保険18.3%
介護保険めやす1.5%~1.8%

保険料率のところが「めやす」「平均」「いずれか」とはっきりしませんね。これは、ごめんなさいです。この表で表せるのはこれがせいいっぱいです。

今の時点では各社会保険の保険料率にかなりばらつきがあることが重要です。数字も記憶しなくて大丈夫でしょう。

さて、ここで重要なことをお話しします。社会保険の保険料は「会社も一緒に負担してくれている」ということです。社会保険には会社とあなたのそれぞれが負担する割合(負担割合)があります。この負担割合は各社会保険で決められています。たとえば厚生年金保険は保険料率が18.3%で負担割合は50:50、会社とあなたが半々の9.15%分ずつ負担する仕組みです。

「こっちの断りなく徴収」されている社会保険というのは、あなたが負担している社会保険料のことです。天引き、なんて言ったりもしますね。

保険料の計算フロートは次のとおりです。

  1. あなたの報酬が決まる
  2. 各社会保険の保険料率に応じた保険料が決まる。
  3. 負担割合に応じて、あなたの保険料が決まる。
  4. 給与から天引きされる。

社会保険の給付は支払われた社会保険料によって決まりますが、このときの社会保険料とはあなたと会社のそれぞれが負担した分の合算です。再び厚生年金保険を例にすると、あなたは実質半分の保険料負担で、その倍額の保険料に見合う給付を受け取ることができるのです。

いわゆる脱サラ組は、会社を辞めた後に、会社が社会保険料を負担してくれていたことにようやく気が付き、今更ながらに感謝することが多いようです。私もそうでした。

実際問題として、社会保険の保険料率については、あなたより会社のほうが敏感かもしれません。わずかな保険料率の上昇でも何百人、何千人もの社員を抱える会社からしたらとんでもない負担増ですから。

社会保険の保険料率とその負担割合については専用のページを用意しました。このページでは説明しきれなかったことや最新の数値を掲載しています。社会保険の勉強をさらに進めたい方はこちらも参考にしてください。

もうひとつ大事なことがあります。「報酬」です。社会保険は報酬が多い人ほどたくさんの保険料を払うシステムになっています。そしてすでにお分かりのとおり、あなたの報酬が増えれば、会社が負担する社会保険料も増えます。

労働者なら誰でも給料を上げてもらいたいところですが、会社の立場では従業員の給料アップは、アップ分以上に負担があるもの、ということを知っておいても損はないでしょう。

最後に報酬について補足です。実は、勉強を進めていくとこの「報酬」が意外とやっかいな存在になります。勉強をすればするほど似たような言葉が次々出てくるからです。「標準報酬月額」「標準賞与額」「賃金総額」。どれも保険料を決める報酬のことですが呼び方や計算の仕方が少しずつ違います。

社会保険に慣れてきたら、それぞれの言葉がどのように使い分けられるのかを理解することも大事ですが、勉強を始めたばかりで、社会保険のプロではない人が最初からここにこだわる必要はないでしょう。

報酬が増えると、あなたも会社も社会保険の負担が増える。まずはこの点をきっちり抑えましょう。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。